〓禅(読み)れんぜん

改訂新版 世界大百科事典 「〓禅」の意味・わかりやすい解説

禅 (れんぜん)

平安末期の文人貴族,漢詩人。生没年不詳。俗名藤原資基。蓮禅は法名で,筑前入道と号した。小野宮藤原実頼の子孫で,父は木工頭通輔。伝記はわからないことが多いが,姉の宰相典侍の生まれた1092年(寛治6)以降に誕生,従五位下まで昇進した。早くから浄土教に心をひかれたらしく,1139年(保延5)ころに,《日本往生極楽記》以下三往生伝のあとを追って,《三外往生記》を著し,49年(久安5)の藤原家成家の歌合には,資基入道の名で列席している。蓮禅の詩は,平安末期の漢詩集《本朝無題詩》に,59首の七言律詩が収められている。貧困と孤独,九州への旅,欣求浄土の思いなどについて述べたものが多く,蓮禅は院政期の厭世詩人,漂泊詩人として注目されている。《本朝書籍目録》には,《打聞集》3巻(同名の説話集とは別の書),《一句鈔》も蓮禅の著として記されているが,両書とも現在伝わっていない。平安中期の文人貴族慶滋保胤(よししげのやすたね)の系列に属する重要な人物といえよう。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の〓禅の言及

【三外往生記】より

蓮禅撰。慶滋保胤(よししげのやすたね),大江匡房,三善為康の往生伝の遺漏を補い,新たに著者の伝聞を加えて編纂した漢文体の往生者の伝記。…

【本朝無題詩】より

…詠ずるのは,風月,詩魔,山居,飄泊,庶民,来迎などの世界で,王朝漢詩文が唯美的頽廃傾向に進む様相をうかがわせる。《本朝無題詩》には漢詩世界の西行ともいうべき漂泊詩人蓮禅の西海舟中の連作があり,〈厨女(くりやめ)は偸(ひそ)かにわが夜の薬を煮るを嘲り,棹郎(かこ)は各々朝の飡(くいもの)の乏(とも)しらなることを怒る,持経の二品(にほん)は囊(ふくろ)に収めて掛け,本仏の一龕(いちがん)は舳(へ)を払って安んず〉(〈遅く江の泊に留まりて戯れに舟中の事を賦す〉巻七)というように,故事にまつわる句や古い歌言葉を使わずに日常のことばを用いた王朝後期の白描詩的な特色を示している。【川口 久雄】。…

※「〓禅」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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