改訂新版 世界大百科事典 「アイユ」の意味・わかりやすい解説
アイユ
ayllu
ケチュア語で,親族の概念を表す。文脈により,親族,身内,村人,村内の居住区画など,いろいろな意味に用いられる。現代の中部ペルー以南のケチュア族やエクアドルでは,おおむね,自己の父方および母方の祖父母,父母双方の兄弟姉妹とその子ども,自己の兄弟姉妹とその子ども,自己の子どもと孫が同一アイユの成員である。したがって,祖父母の兄弟姉妹やその子どもたちは含まれない。そこで,アイユとは,個人を中心にしてひろがる特定範囲の親族ということになり,日本の親類から姻戚を除いたものに近い。16世紀以前では,アイユ成員が近接して住み,土地を共有することもあって,アイユが村落と重なる場合があった。インカ帝国においては,アイユ成員としての世帯主100人のまとまりをパチャカ,1000人のまとまりをワランハとする行政組織があり,アイユがインディオ農民社会の最小行政単位であって,その長はクラカとよばれた。
執筆者:大貫 良夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報