ケチュア(読み)けちゅあ(英語表記)Quechua

翻訳|Quechua

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケチュア」の意味・わかりやすい解説

ケチュア
けちゅあ
Quechua

南アメリカのエクアドルからペルー、ボリビアにかけて、アンデス山脈一帯に住み、ケチュア語を話す人々。かつてインカの王たちに支配されていた人々の子孫である。大部分が農民で、掘棒などの簡単な農具を使い、ときには小規模の灌漑(かんがい)を行って、トウモロコシ、ジャガイモなどをつくる。ただし、高地ではトウモロコシはあまり栽培できず、ジャガイモが重要である。ジャガイモを切って寒天にさらし、冷凍、乾燥させたチューニョという保存食をつくる。家畜としてラマアルパカ放牧を行う。これらは重要な荷駄獣であり、またその毛で衣服をつくる。テンジクネズミモルモット)がインカ時代から食用にされている。伝統的な家屋は、日干しれんがの壁と草葺(ぶ)き屋根で、一部屋しかない。そこに夫婦とその子供たちが住む。標高約4000メートル以上の高地に孤立して住むケチュアの伝統的な村落は、たいてい数十から百数十戸の家からなり、多くは先インカ時代からの歴史をもつ共同体を形成している。土地は村落が所有し、毎年、各家族に畑が割り当てられる。また、農作業に関して村落内で労働力の交換制度がある。相続父系をたどるが、親族父方、母方ともに重要である。結婚は地域内婚、多くは村落内婚で、一夫一妻が普通である。初め、妻は夫の両親の家に入り、1年ぐらいたつと新しい家を建てて夫婦で移る。宗教は名目上はカトリックで、どの村も教会守護聖人をもち、毎年、村の守護聖人の祭りを盛大に行う。他方、聖母マリアはしばしば大地母神と結び付けられ、山の頂に住む精霊を信仰するなど、ケチュアの宗教はキリスト教と征服以前の土着宗教が混ざり合った独特なものである。宗教儀礼のときに、トウモロコシからつくるチチャ酒を飲んだり、ときにはコカを食べることがある。

[板橋作美]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android