親類(読み)シンルイ

デジタル大辞泉 「親類」の意味・読み・例文・類語

しん‐るい【親類】

家族を除く、血族姻族の総称。その家族から見て、血縁や婚姻で生じた関係によってつながっている人々。親戚しんせき。「遠くの親類より近くの他人」
同類やよく似ているもののたとえ。「狼と犬は親類である」
父系の血族。父方の一族。「縁者」と区別していう。
「朝敵と成りて、―みな梟せられ」〈古活字本平治・上〉
[用法]親類・親戚しんせき親族――「親類(親戚・親族)一同が集まった」など、血縁関係を表す場合は、相通じて用いられる。◇「親類」と「親戚」は日常的には同じように使えるが、「親類」の方がよりくだけた感じがある。また、同類であることやよく似ているという意を示す「トラとネコは親類だ」のような例では、「親戚」よりは「親類」を用いるのが普通。◇「親類(親戚)の家に厄介になる」に「親族」は使いにくい。「親族」は、家族・親戚を一つのグループにまとめて、改まって言う場合に用いる。「親族会議」「御親族のかたから御焼香願います」など。
[類語]親戚親族姻戚姻族親等

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精選版 日本国語大辞典 「親類」の意味・読み・例文・類語

しん‐るい【親類】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 血族および姻族の総称。血縁・婚姻などによって関係づけられる人々。みより。みうち。親戚。親族。類親。江戸幕府法上は甥従弟の続までは親類とされている。具体的にいえば、配偶者・直系血族・他家の養子とならない直系卑属の妻・三親等以内の傍系血族、および四親等の傍系血族のうちいとこだけであるが、このほか養子と養親およびその親類とか、嫡母と庶子、継父母と継子との間柄も親類とみなされた。親類は互いに服忌を受けた。
    1. [初出の実例]「何ぞ若干の財物を虜領せしめ、若干の親類を殺害せしめて、其の敵に媚ぶべけむや」(出典:将門記(940頃か))
    2. 「京に親類(シンルイ)とてもなく、此たび不首尾あっては」(出典:浮世草子・好色盛衰記(1688)五)
  3. ( 特に「縁者」と区別して ) 父方の血族。父系の一族。
    1. [初出の実例]「去んぬる保元に、門葉の輩おほく朝敵と成りて、親類みな梟せられ」(出典:平治物語(1220頃か)上)
    2. 「親類縁者たり共、他国者は城内へ堅く禁制との掟なり」(出典:浄瑠璃・国性爺合戦(1715)三)
  4. よく似ていること。また、そのもの。
    1. [初出の実例]「空(あ)いた方の手に栄螺(さざえ)の親類(シンルヰ)をつくりながら」(出典:虞美人草(1907)〈夏目漱石〉一)

親類の語誌

( 1 )ほぼ同義の「親戚」が漢文系の資料に限られるのに対して、「親類」は一五世紀以降、抄物・狂言台本・キリシタン資料など口語資料にもあらわれ、江戸時代には広く一般化した。
( 2 )明治以降の国定教科書では、「親類」はあるが、「親戚」は用いられていない。

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改訂新版 世界大百科事典 「親類」の意味・わかりやすい解説

親類 (しんるい)

親族組織は特定の先祖を共通にする人々を組織化した祖先中心的親族組織と,現在生きている特定の個人を中心に組織化した自己中心的親族組織に大別することができる。日本にはこの二つの親族組織がみられるが,親類はこのうちの自己中心的親族組織の一種である。親類はオヤコ,オヤグマキ,イトコシンルイマキ,シンルイ,シンセキ,ヤウチ,イッケ,ハロウジキョーデーなど地域によって多様な民俗語彙で指示され,その内容も地域によって多様である。イトコ,オヤコ,ハロウジ,キョーデーは単位を個人とする自己中心的親族組織の性格が非常につよく,例えば岩手県海岸部地方でよく用いられるイトコは,ある個人とある個人がイトコどうしであるという側面が強調される。これに対してシンセキ,ヤウチなどは家どうしの親類関係が強調されている。

 家どうしの関係として親類の構造を分析するなら,親類を構成する家は,(1)分家,独立した家,(2)婚姻や養子縁組で転出した者の婚家・養家とその親類,(3)婚姻や養子縁組によって転入した者の実家とその親類の3種である。これらのうち(1)は本家分家関係であり,特定の家が存続してその家の系譜関係が認知され機能するかぎりにおいて永続的で,しかもその範囲はほぼ固定的である。しかしながら本分家関係にあるすべての家々を親類のなかに含めるかについては変差が著しい。ある場合には細かな関係がたどれないほどの本分家をも親類のなかに包含しているのに対して,ある場合には親類として組織化する本分家を最近2~3代に分家したごく近い家々に限定している。(2)(3)は一般に姻戚とよばれる家々であって,この関係は個々の家によってその範囲が異なり,さらに親類関係締結の契機となった当事者(嫁や養子など)の死亡などによってその範囲が移動し,持続的固定的集団を形成しがたい世代限定的構造をもっている。姻戚は特定の範囲の家々に限定することによって親類としての機能をより発揮することが可能となるから,ある場合には第1イトコまで狭く限定することもあるが,一般的にいえばその範囲は自己を中心としてほぼ上下2世代である。

 親類は社会生活のなかで伝統的にきわめて重要な機能を果たしてきたし,現代の都市生活においても親類の重要性は失われていない。親類の機能は多様であるが,伝統的な農村生活においては田植,稲刈りサトウキビの収穫などの際の共同労働(ゆい,イータバ,テマガエなどとよばれる)や出産,婚姻,葬送など人間の一生の危機的状況にあたって重要な機能を果たしてきた。また親類は盆行事などにおいて,墓地や位牌を相互に詣(まい)りあい,奄美地方のハロウジに典型的にみられるように祖先祭祀の機能も親類の重要な機能であった。

 日本社会において親類は単独で存在してきた例も多かったが,祖先中心的親族組織である同族や門中と複合して存在してきた例も多くみられ,その複合形態は多様である。ある場合には親類のなかに同族が包含され,親類の枠を超えるほど同族の発達をみないものもあれば,親類の枠を超えて同族が発展,存続している例もある。これまで同族が多面的な機能を果たしてきた社会においても,同族とは異なった形で,その他の親類との権利義務をともなうのが一般的であって,しばしば主張されるように,最近になって同族結合が弛緩し親族関係がより強化されたという同族から親族への変化図式が,日本の親族組織全体にあてはまるわけではない。とくに村落社会内部での通婚がきわめて多い西南日本の内婚的村落(対馬五島,奄美など)においては,伝統的に同族が形成されず自己中心的親族組織である親類が重要な意味をもっていたのである。
親族
執筆者:

中世の族縁集団を整理してみると,一族と親類という二つの集団概念に分類される。一族というのは,父系原理で継承された先祖所領の共同知行体のことであり,家長ないしは嫡子を中心として結合している血縁ないし擬制血縁集団のことにほかならなかった。一方,親類については,鎌倉幕府の追加法140条に,次の表現がみられるのが参考になる。

 一,評定の時退座すべき親類の事

 祖父母,父母,子孫,兄弟(姉妹),聟,

 舅,相舅,伯叔父,甥,小舅,従父兄

 弟,夫(妻訴訟の時,退座すべき也),烏帽

 子々

 したがって,これによれば,親類とは,たんなる血縁集団ではなく,婚姻で結ばれた姻族(婿,相舅(あいやけ)など)をも含む概念であったことが明らかになる。しかも,鎌倉時代の族縁呼称をしらべてみると,この親類という語を用いるほうが一般的であり,一族という語は少なかった。このことは,鎌倉時代の族縁集団が,基本的には,上記の意味での親類であったことを示すものである。一族という語が一般化するのは,中世後期に入ってからで,これは,このころに入り,父系一元的な家族組織が社会の土台となったからにほかならなかった。そして,このころになると,一族という語と親類という語の間に混同が生じ,親類という表現を用いていても,その実体は,さきの意味での一族であるという場合がみられるようになった。

 ところで,中世前期の文書には,この親類という語が,〈親族兄弟〉〈妻子親類〉〈親類下人所従等〉という表現形式をとってあらわれている。これは当然,その親類という概念のなかから,兄弟,妻子,所従らが除かれていたことを意味するであろう。すなわち,兄弟・妻子が近親,下人所従が非自由民といえるのに対して,親類は,それ以外の親戚縁者(遠類)をさすのが,その本来のあり方だった。しかしこれも中世後期に入ると,遠類にして従者化するものが現れるにともない,下人所従を親類の一員とみる傾向も現れ始めた。
執筆者:

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普及版 字通 「親類」の読み・字形・画数・意味

【親類】しんるい

親戚。〔魏書、崔巨倫伝〕姉り。惠にして才行り。患に因りて一目を眇(べう)す。外の親、求むる(な)し。其の家、議して之れを下嫁せんと欲す。倫の姑~の妻、高篤、聞きて悲感し、~乃ち子のの爲に之れをる。

字通「親」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「親類」の意味・わかりやすい解説

親類
しんるい
kindred

日本では,縁組による家の結びつきと,同族的な家と家との結びつき (ただし非血縁の本分家を含まない) とを包括する概念であり,このような親族組織の裏づけを伴った家のつながりをさす。親類あるいは親戚の両語は,日常用語のなかでも,親族の関係が家と家との関係として現れる場合により多く用いられている。個人をさして親類縁者と呼ぶことがあっても,それは親類たるその家を代表する者または親類たる家に属する者の意味で用いられているのである。日本の親族組織では,個人よりも家が重視されるが,親類関係で個人が単位となっている社会も少くない。また親類という概念,範囲も,社会や文化によってかなり異なる。

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世界大百科事典(旧版)内の親類の言及

【家】より

…したがって個々に独立した家計を営むものが一般的に近世の家と称することができるが,法的には親族も重要な意味を持っていた。親族は親類,遠縁,縁者に分けられ,親類は配偶者,直系血族のほか甥,従弟まで含まれる。武士が仕官などの際に提出する親類書にもその範囲までは含まれる。…

【親族】より

…日本の親族の場合,個人単位の関係に家単位の家連合と呼ばれる枠組みによって規定されつつ機能し,構造化されてきた。つまり,親類(日本語)とか親戚(中国語で宗族と姻戚)と呼ばれ,それを親族とも呼ぶこともあるが,術語としてはまぎらわしさを避けるため親類の語が適切である。親類は個人単位の親族関係により家長の家族相互が結びつけられている家と家の関係で,特定の任意の家のもつ家連合のネットワークであって,同族のうち親族分家とその本家の関係,および縁組関係を合わせ含む。…

【服忌令】より

…江戸幕府では,これらをもとにして5代将軍徳川綱吉の1684年(貞享1)儒者林鳳岡(ほうこう),木下順庵,神道家吉川惟足(これたり)らの参画の下に,服忌令を制定公布,その後数次の改正の後,1736年(元文1)最終的に確定した(表参照)。服忌令は,そこに載せられた範囲の親族が原則として親類とされて互助などの義務を課せられるほか,それら親類の間に尊卑,親疎によって6段階の格差が設けられ,家父長制的な家族,親族秩序の強化に役だてられた。諸藩も幕府の服忌令をそのまま,あるいは変更を加えて用いた。…

※「親類」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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