改訂新版 世界大百科事典 「アエドン」の意味・わかりやすい解説
アエドン
Aēdōn
ギリシア伝説で,テーバイ王ゼトスの妻。ゼトスとのあいだに一子イテュロスをもうけたが,夫の双生の兄弟アンフィオンの妻ニオベに多くの子どもがあるのを嫉妬し,イテュロスとともに養育されていたニオベの長男の殺害をくわだてた。しかし夜陰に乗じて子どもらの寝室にしのびこんだ彼女は,誤ってわが子を殺したため,悲嘆にくれているところをゼウスによってウグイス(ギリシア語でアエドン)に変えられた。春のウグイスのさえずりは,わが子を刃にかけたアエドンの嘆きであるという。この話はホメロスの《オデュッセイア》の中で,オデュッセウスの貞淑な妻ペネロペによって言及されているが,実子イテュスを殺して同じくウグイスに変容させられたフィロメラ(またはプロクネ)の話としばしば混同される。19世紀の英詩人スウィンバーンの《イテュルス》も,その題名にもかかわらず,明らかにイテュスのことを歌った詩である。
執筆者:水谷 智洋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報