ニオベ(読み)におべ(英語表記)Niobe

翻訳|Niobe

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニオベ」の意味・わかりやすい解説

ニオベ
におべ
Niobe

ギリシア神話タンタロスの娘。竪琴(たてごと)の名手アンフィオンの妻で、2人の間には7男7女、あるいは10男10女、または六男六女が生まれたという。このようにニオベはとにかく子宝に恵まれていたので、ゼウスとの間にアポロンアルテミスの一男一女しかいないレトよりも自分のほうが優れていると誇った。そこで怒ったレトはわが子に復讐(ふくしゅう)を求め、アポロンはニオベの男の子を、アルテミスは女の子をそれぞれ射殺した。一説には父親のアンフィオンもこのとき射殺されたと伝えられている。母親のニオベは嘆き悲しんで石に身を変じたが、その石はリディアのシピロス山上にあるという。あるいは、ニオベは父タンタロスの住むシピロス山へ逃れてそこで泣き続け、石と化したともいう。この山には後世までその石があったといわれ、パウサニアスなどは『ギリシア誌』に実際にこれを見たと記している。ニオベの伝説は、ホメロスを初見として文学の素材に繰り返し用いられ、また壺絵(つぼえ)や彫像などにも、アポロンとアルテミスに射られるニオベの子供が好んで描写されている。

[伊藤照夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニオベ」の意味・わかりやすい解説

ニオベ
Niobē

ギリシア神話の女性タンタロスの娘で,テーベの王アンフィオンと結婚し,7人の息子と7人の娘を産んだが,そのことを自慢し,アポロンとアルテミスの2児しか産まなかったレトより自分のほうがまさるといったためにレトの怒りを買い,アポロンとアルテミスに子供をすべて射殺されてしまい,悲しみのあまり岩に変った。この岩からは,彼女の涙が泉になって流れ続けていたという。

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