アクセルの城(読み)あくせるのしろ(その他表記)Axel's Castle

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アクセルの城」の意味・わかりやすい解説

アクセルの城
あくせるのしろ
Axel's Castle

アメリカの評論家E・ウィルソンの評論集。1931年刊。副題「1870年より1930年にいたる想像文学の研究」が示すとおり、イェーツバレリー、T・S・エリオット、プルーストジョイススタイン、ランボーらの作品に表れた象徴主義の研究である。象徴主義の立場から西欧文学、ひいては世界文学の中心になるべきものをとらえようとし、また当時イプセン主義から一歩も出られなかったヨーロッパ読者界への挑戦をも意図した。補遺部分のダダイズムの説明も当時としては画期的なものであった。題名はビリエ・ド・リラダンの『アクセル』に由来する。

[森 常治]

『大貫三郎訳『アクセルの城』(角川文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

関連語 角川文庫

世界大百科事典(旧版)内のアクセルの城の言及

【ウィルソン】より

…法律家の父の周到公平な仕事ぶりを受けつぎ,読みの深さと巨視的な把握を身上として,フロイトやマルクスを援用してもつねに特定の思想を超えて対象の本質に迫る。象徴主義批判の書《アクセルの城》(1931)が逆に象徴主義,ひいては20年代文学の先駆的味解の書たりえたゆえんである。書評を主軸とする《古典と商品文学》(1950),《光の岸辺》(1952),《わが歯間の馬銜(はみ)》(1965)の3巻の文学的年代記,社会主義の起源と歴史を劇的に構成した《フィンランド駅へ》(1940)や南北戦争時代の膨大な秘録を渉猟した警世の証言集《愛国の流血》(1962)などの長編評論,《傷と弓》(1941),《ロシアへの窓》(1972)などの文学論集,そのほか小説,戯曲,旅行記,自伝的散文など,いずれも〈最後の文人〉にふさわしい文体の成熟を誇っている。…

※「アクセルの城」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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