化学辞典 第2版 「アセトン糖」の解説
アセトン糖
アセトントウ
acetone sugar
糖のO-イソプロピリデン誘導体,すなわち,糖とアセトンとの脱水縮合物である環状アセタールの総称.一般には,糖を過剰のアセトンのなかで,硫酸,塩化亜鉛などの脱水触媒とともにかきまぜてつくられる.この場合,フラノース環上のシス位の隣接ヒドロキシ基との縮合物の立体が熱力学的に安定なので,ピラノースからフラノースへの変化を伴うことがある.たとえば,通常,ピラノース型で存在するグルコースは,両末端のヒドロキシ基が関与した1,2;5,6-ジ-O-イソプロピリデン誘導体を選択的に生成する.この熱力学的安定性の差は糖のヒドロキシ基の立体配置の決定や,選択的な保護に利用される.アセタール環はアルカリに対して安定であるので,アルカリ性で行われる反応の際にヒドロキシ基を保護しておくのによく利用される.酸にはきわめて不安定であり,容易にもとの糖とアセトンとに加水分解される.なお,糖とベンズアルデヒドのようなアルデヒド類との縮合物ではピラノース構造が優先する.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報