アニオン電着塗装

日本の自動車技術240選 「アニオン電着塗装」の解説

アニオン電着塗装

 従来の防錆塗装方法、エアースプレー方式では隅々まで塗装が行き届かなく、ディッピングの場合はタレの処理に手数を要していた。 1963年フォードにて電着塗装の利点が発表され、自動車への適用検討が始められた。トヨタ車体では、1964年初めから電着塗装の自動車への適用の開発に着手し、同年秋には、実験プラントを設置し、1965年4月、刈谷向上に日本で始めて電着塗装のボデーライン装置が完成し、量産方式による稼動を始めた。 電着塗料を陰極とし、被塗物を陽極として100V前後の直流電圧をかけると、樹脂及び顔料成分は陽極に向かって移動する(アニオン電着塗装)。陽極に達した樹脂及び顔料成分は負電荷を失って陽極方面に塗膜を形成する。さらに電圧より脱水され90%程度の非常に濃度の高い塗膜になり(電気浸透作用)、電着塗装後の水洗いではこの水に不溶な塗膜は残り、単に付着しているフリーペイントのみが除去される。 電着塗装は、閉断面部を含めて防錆力が各段に向上し、塗料ロスが非常に少ない。(1)塗膜厚さが時間・電圧によって容易にコントロールでき、膜厚バラツキを大幅に低減できる。また、タレや流れのない塗膜が得られる。(2)エッジ、コーナー部、箱の内部、スポット溶接部も十分な塗装ができる。(3)低濃度塗料侵漬法であり、ボデーによる槽外への塗料持出し量が低減できる。 稼動1ヶ月で膜厚が付かなくなる。樹脂を水溶化する中和剤のアミンが槽内に蓄積したのが原因で、槽内塗料を入れ替えるとともに、恒久対策としてイオン交換装置を導入し、アミン除去を定常的に行い対処。 下塗りに併せて中塗り塗装にも追加適用したが、当初は電着塗膜を乾燥させずに、水性塗料をウェット・オン・ウェットにて塗布したが、当時は塗膜中の水分量が不安定であったために塗装外観不良が発生。電着塗膜乾燥後の中塗り塗装に改める。 1965年6月、コロナハードトップRT50 の乗用車ラインに電着塗装技術を適用する。 内外板の高防錆化を狙って、1971年、従来のマイレン化油電着塗料から合成樹脂(ポリブタジエン電着塗料)電着塗料に変更。保管場所トヨタ車体(株)本社・富士松工場技術管理部 (〒448-8666愛知県刈谷市一里山町金山100番地)
製作(製造)年1965
製作者(社)トヨタ車体(株)
資料の種類設計図・文献
現状保存・非公開
会社名トヨタ車体㈱
通称名アニオン電着塗装(ED塗装)
搭載車名コロナハードトップ(RT50)
製作年1965.4
協力者トヨタ自動車㈱
構造・方式・手段・方法等塗装工程:①補助電極取付(8種)②補助電極短絡テスト③プラス電極及び耳輪取付④ED塗装⑤水洗+エアブロー⑥補助電極・プラス電極取り外し⑦エアブロー⑧補修塗装⑨ED塗膜焼付ED塗装方法:塗料濃度(加熱残分):14.0±1.0%;電圧:55~80V;膜厚:20~30μ(ボデー側面);塗料pH:7.8±0.3;コンベアスピード:1.6m/min;塗料温度:23±2℃(第1次温度管理範囲);液循環:1サイクル/h;その他工程条件:⑤水洗スプレー圧:1.0±0.2kg/c㎡;⑤エアブロー圧:1.5±0.2kg/c㎡;⑦エアブロー圧:4.0±0.5kg/c㎡;⑨焼付:ボデー温度160±10℃、保持時間25±5min;塗料:エスベアTS-4(ブラック):神東塗料㈱
エピソード・話題性自動車ボデーライン量産方式のアニオン電着塗装を開発し、日本で最初に稼動する。
特徴 従来の防錆塗装方法のエアースプレー方式やディッピングに比べ、塗膜厚さが時間・電圧等によって簡単にコントロールでき、均一な膜厚が容易に得られる。しかもエッジやコーナー部・箱の内部やスポット溶接部も十分な塗装ができ、またタレのない塗膜が得られた。 低濃度途料侵漬法であり、ボデーによる槽外への塗料持出し量が低減し、塗料損失が少ない。 防錆力は閉断面部を含めて格段に向上した。
参考文献トヨタ車体50年史(第4章 塗装生産方式の変遷と生産性向上)
その他事項技術用途:ボデー防錆(下塗り)塗装;実物所在:トヨタ博物館(RT50);

出典 社団法人自動車技術会日本の自動車技術240選について 情報

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