日本大百科全書(ニッポニカ) 「アマズラ」の意味・わかりやすい解説
アマズラ
あまずら / 甘葛
ブドウ科(APG分類:ブドウ科)の木性つる植物であるツタParthenocissus tricuspidata Planch.の古名。甘い汁のとれる「つる」の意である。平安時代には、冬から早春に太いツタの幹を切り、にじみ出る樹液を集め、煮詰めて濃縮し、甘味料(甘葛汁)を得たことが『源氏物語』その他にみえる。アマズラは切ってしまえばあとは枯死するので、甘葛汁は貴重品であった。ちなみに、日本で砂糖の利用が始まるのは室町時代以降のことで、それ以前には甘味料として、このほかに水飴(みずあめ)、甘酒、甘茶、干し柿(がき)などが利用されていた。
[星川清親 2019年10月18日]