改訂新版 世界大百科事典 「アラカン国」の意味・わかりやすい解説
アラカン国 (アラカンこく)
ベンガル湾の一角,ビルマ(現,ミャンマー)の南西に1785年まで栄えていた独立王国。伝説によると,カラダン川の上流に隠遁した天竺の迦毘羅(かぴら)城の城主アッジュナと1頭の牝鹿との間に生まれた男児マーラユが,成人して周辺の諸蛮を征服,ダニャワディーを築城した。それがアラカン国の起源だとされる。タガウン国の王位継承に敗れたカンヤーザージーがダニャワディーを築城したのが起源だとする説もある。地形上,古くからベンガルとの関係が密接で,ウェーターリー遺跡出土のサンスクリット碑文によると,アラカン国では5~6世紀にはシバ神が,7~8世紀には大乗仏教が信仰されていた。当時の国王名はすべてチャンドラという名称で終わっていたことなどが知られる。アラカン国は1287年のパガン朝崩壊後500年間にわたって独立を維持,仏教とイスラムに基づく文化を育て,経済的にもポルトガルやオランダとの交易で繁栄していたが,1785年コンバウン朝ビルマに征服されて滅んだ。
執筆者:大野 徹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報