化学辞典 第2版 「アルカリマンガン電池」の解説
アルカリマンガン電池
アルカリマンガンデンチ
alkaline manganese battery
アルカリ一次電池の一種.円筒形,角形のアルカリ乾電池と偏平形のアルカリボタン電池とに分けられる.マンガン乾電池と同様に,正極の活物質として二酸化マンガン,負極の活物質として亜鉛を使用する電池である.正極は活物質の二酸化マンガンの電気伝導性が乏しいので高純度の黒鉛を添加し,負極はゲル化されたアルカリ溶液中に亜鉛粉末が分散している.電解液に35~45% の水酸化カリウム水溶液を用い,亜鉛の溶解を抑えるために酸化亜鉛が添加されている.反応式は,
正極:2MnO2 + 2H2O + 2e- → 2MnO(OH) + 2OH-
負極:Zn + 4OH- → [Zn(OH)4]2- + 2e-
この亜鉛酸イオンは,やがて電解液中に飽和し,以下の反応を経て水酸化亜鉛の沈殿となる.
[Zn(OH)4]2- → Zn(OH)2 + 2OH-
さらに正極反応で水が消費されると,水酸化亜鉛の脱水,
Zn(OH)2 → ZnO + H2O
が進むので,負極全反応式は,
Zn + 2OH- → ZnO + H2O + 2e-
となる.全体として,
2MnO2 + Zn + 2H2O → 2MnO(OH) + Zn(OH)2
と表される.起電力は公称電圧で1.5 V.放電容量が大きく,大電流放電もよく,マンガン乾電池の2~10倍の性能である.マンガン乾電池より高価であるが,大電流を必要とする小型携帯機器が増えるに伴い需要が伸びている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報