改訂新版 世界大百科事典 「アングレクム」の意味・わかりやすい解説
アングレクム
Angraecum
マレー語のランの総称名であるアングレックangurekに基づいて名付けられたアングレクム属Angraecumはその名の起りとは矛盾するが,アフリカ熱帯からマダガスカル島に分布の中心を有する着生ランの大きな属で,花の距が長く発達することで有名である。多数の種がヨーロッパで栽培されているが,日本では洋ランとしてそれほど普及してはいない。
葉は直立し,左右に葉を互生する。葉は細くて丸いものから幅広で長いものまでいろいろある。花茎は葉腋(ようえき)より斜めに出,数輪の花をつけ,4~5週間みられる。色は多くは白色蠟質で,花径は1~15cmくらいとまちまちで,いずれも距が大きく発達し長いのが特徴である。日本ではアングレクム・セスキペダレA.sesquipedale Thouarsが有名で,ほかにアングレクム・ディスティクムA.distichum Lindl.とアングレクム・スコッティアヌムA.scottianum Reichb.fil.とをみかける程度である。アングレクム属の花は長い距の先に蜜をため,その蜜を吸うことのできるような大型で口吻(こうふん)の長いガが有効な送粉昆虫になっている。日本のフウランは近縁属で,ときには同属とされることもある。熱帯原産なので越冬は10℃以上が必要である。春から秋は戸外で風にあて,寒冷紗下におく。冬は多湿にし,施肥は春から初秋までにする。ふやしにくい。
執筆者:江尻 光一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報