日本大百科全書(ニッポニカ) 「イタチノシッポ」の意味・わかりやすい解説
イタチノシッポ
いたちのしっぽ
[学] Rhizogonium dozyanum Sande Lac.
コケ植物ヒノキゴケ科の1種。湿度の高い所を好み、山林中の腐植土上などに大きな群落をつくる。茎は高さ5~10センチメートルで、下半部は褐色の仮根で覆われている。葉は密につき、茎の中ほどのものが最大で、長さ1センチメートルくらい。葉は細長い線形で先がとがり、中央脈は葉の先端まで届く。胞子体は3~4センチメートルの柄(え)をもち、蒴(さく)は円柱形で、ほぼ水平につく。秋から冬にかけて葉が褐色に変わることがあるが、春には茎の先端に新葉がつくられ、美しい緑色になる。植物体の形が動物の尾に似るところからイタチノシッポの名があるが、ヒノキの樹形にも似たところがあるのでヒノキゴケともよばれる。本州、四国、九州に一般的にみられる。この種類は「苔(こけ)園芸」のうえで重要なもので、普通、苔庭に利用され、とくに京都の西芳寺(さいほうじ)(苔寺(こけでら))では、寺の入口から表門にかけての両側に、このコケが一面に生えている。また近年では苔盆景や苔鉢などにもよく利用される。栽培上では水分調整が重要で、空中湿度を高く保つ必要がある。
[井上 浩]