同一場所にいっしょに生育している植物群を、ある規準によって区分し、植生に単位性をもたせたとき、群落あるいは植物群落という。一般的には、ある種が優占する植物集団を便宜的に群落としてとらえることもできる。しかし、厳密に群落という場合は、生物共同体のなかの植物から構成される部分をさし、しかも同じ立地条件が続く限り、ほぼ同じ種組成で繰り返し出現する種の組合せと規定されている。植物群落の単位性については、植物間に有機的な関係があるとする見方と、単に個々の種の分布の偶然な重なりにすぎないとする見方がある。群落にはまた、野外において実際に認識できる個々の具体的群落と、ある体系に基づいて分類、統合した場合に認められる抽象的群落とがある。
[奥田重俊]
群落はさまざまな観点から、次のように類型化される。
(1)相観(植物集団の姿)による類型。この場合、分類された単位は群系とよばれる。これは、群落の相観を規定している主要な植物の生活型によって決定される場合が多い(たとえば夏緑広葉樹林、北方針葉樹林、ススキ草原など)。相観的な群落区分は種名の知識をあまり必要としないため、植物地理学の初期の時代に用いられた。またシヌシア(同じ生活型の種から構成される群落)のように、森林の各階層や同一の生活型で示される単層の群落(たとえば樹皮上のコケ植物群落など)を一つの生活型社会としてとらえる見方もある。
(2)優占種による群落類型。この場合は、基(き)群集sociationを基本的な単位とする。森林群落などの多層群落では、各階層の優占種を結び付けて群落を命名する。スウェーデンのド・リエDu Rietzらによって確立され、種組成の単調な北欧を中心に発達したため、この方式を用いる学派は北欧学派、またはウプサラ学派などとよばれている。
(3)群落構成にあずかるすべての種に同じ重みづけを置き、種の組合せを重視した群落類型。この立場はスイスのブラウン・ブランケBraun-Blanquetによって確立された。基本単位は群集で、標徴種と識別種で規定される。標徴種とは、ある型の群集に特徴的な種をいい、識別種とは、群集をさらに下位単位に区分するための種をいう。群集はさらに、ヒエラルキー(群落階級)によって、上級単位(群団、オーダー〈群目〉、クラス〈群綱〉)や、下位単位(亜群集、変群集)などに分けられ、群落単位の相互関係が明確に秩序づけられる。この方式は中欧を中心に発達し、これを支持する学派はチューリッヒ・モンペリエ学派とよばれている。日本でもこの学説を支持する学者が多く、国際的な相互比較を行いながら群落の記載や群落体系化が行われている。
[奥田重俊]
ブラウン・ブランケの植物社会学的な群落類型の手法は、野外における植生調査(アウフナーメ)と室内における組成表作業とに分けられる。植生調査は、野外における均質な植分(現存植生)に対して最小面積を上回る広さの方形区を設定し、その範囲内に出現するすべての種が厳密に記載され、同時に各植物の被度と群度が調査される。被度とは、各植物体が地表面を覆う割合であり、群度とは、群落内にある種類がどのような集合状態で生育しているかを示す尺度である。さらに海抜高や傾斜角、土壌状態などの立地条件も調査される。こうして得られた植生調査資料は、以下の手順で組成表作業に進んでいく。(1)ほぼ同じ種群から構成される調査資料を一つの素表へ記入する。(2)常在度の高い種から順に並べ、常在度表への書き換えを行う。(3)70~30%の常在度をもつ種を暫定的な診断種としたあと、部分表を作成し、識別種群を発見する。この間、部分表は何回も書き換える。(4)識別種の有無または組合せによって種群の配列を行い、局地的な識別表を作成する。この段階で局地的な群落単位が抽出される。(5)さらに類似の調査資料を総合表で比較し、標徴種を発見する。(6)最後に識別表から群集表への書き換えを行う。
群落は生育地において、外因的なさまざまな環境条件と、植物個体(群)の相互の競争や共存という内因的な条件のもとに、過去から現在にかけて存続している植物の生きた集団である。したがって、現存の群落は、その生育地とそれに与えられるさまざまな立地条件の総和とが生きた植物集団によって具現されているとみなすことができる。このため、厳密な野外調査と組成表作業によって類型化された群落単位は、立地の的確な指標の役割を果たしているといえる。
群集を基礎とした群落区分は植生研究のすべての分野においての前提条件でもある。群落の分類や体系化が進歩・発展するのにあわせて、最近では、群落単位の配分を地図化した植生図化vegetation mappingが急速に発達してきている。植生図に示された区分は、植物の側からの環境指標でもある。したがって植生図は、地域の立地診断、あるいは自然保護区の設定など、地域的な諸計画のための基礎図として、その応用範囲はきわめて広い。
[奥田重俊]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…植生のうちで相観や種組成でなんらかの均質さがあり,生態学的な類型化ができるような植物の集団を指すが,単にある地域に生育する植物の集団という意味で植生と同義に用いられる場合もある。単一の植物からなるものを純群落という。群落はcommunityの訳で,かつては共同体と訳された。…
※「群落」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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