改訂新版 世界大百科事典 「イトグサ」の意味・わかりやすい解説
イトグサ (糸草)
Polysiphonia
フジマツモ科の海産紅藻。1個の管状の中心細胞のまわりを,4個またはそれ以上の管状の周心細胞がとりかこみ,このようにしてできた節部が連結して糸状または円柱状の体をつくる。学名のpoly(多),siphon(管)はこのことに由来する。種類数が多く,日本沿岸だけでも30種以上の生育が知られる。体は叉(さ)状,または叉状様互生に分枝し,枝はさらに小枝を出し,体全体はふさ状になるものが多い。有性生殖は卵細胞と精子,無性生殖は四分胞子による。生活史は外見上同形の配偶体と四分胞子体,さらに雌性配偶体に形成される果胞子体の3世代交代で,この様式はイトグサ型生活史と呼ばれる。他の紅藻にもこの生活史をとるものが多い。世界各地の沿岸に分布する。
執筆者:千原 光雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報