改訂新版 世界大百科事典 「イヌナンカクラン」の意味・わかりやすい解説
イヌナンカクラン
Tmesipteris
ヒカゲノカズラ科のナンカクランに外見が似ているところから和名がつけられたが,マツバランに近縁のシダ植物の属名で,日本には自生しない。マツバランと共に奇抜な形態は観賞に値するが,高温多湿の条件を要し,栽培はむずかしい。ヘゴの幹などに着生する。植物体は地下茎と地上茎に分かれ,地下茎は針金状で短くはい,枝分れをする。表面に仮根をつけるが,根はない。地上茎は地下茎から生じ,まれに二叉(にさ)に枝分れする。全長はせいぜい30cm程度。地上茎には葉がつき,地上茎の下部ではしだいに小さく突起状になり,茎の先端は葉に終わる。葉は長さ1~2cm,葉身は縦に扁平であり,地上茎の上部は羽状葉的になる。長楕円形で短い葉柄があり,先端は短い芒(のぎ)状となる。葉脈は1本。胞子囊は大型で2室に分かれ,二叉に分かれた胞子葉の分枝点近くの表側(向軸側)に1個つく。オーストラリア,ニュージーランド,ニューカレドニアを含む南太平洋諸島に分布し,フィリピンにも産する。
執筆者:加藤 雅啓
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報