…ミクロネシアでは楽器の音を畏怖する傾向があり,したがって器楽的な演奏の場が極端に少ないのに対して,メラネシアでは娯楽的にも(フィジーの搗奏竹筒によるにぎやかな合奏)また儀礼的にも(ニューギニアで祖先に見立てられ神聖視される笛の重奏や,ソロモン諸島のパンパイプの合奏),楽器が純器楽用に使われる機会が多い。ポリネシアはいわばその中間で,歌や踊りの伴奏として積極的に応用され,ハワイの石のカスタネット(イリイリ)やガンビエ諸島の太鼓(パウ)がその例である。 このように,楽器の種類が少ない反面,類似の楽器でも島ごとに微妙に異なる材料やつくりが観察される。…
…ヤシの丸太をくりぬきサメ皮を張った片面太鼓パフpahu,ヤシ殻に魚皮を張り膝に結びつける片面太鼓プーニウpūniu,巨大なひょうたんをマットの上で搗奏したり,指や手のひらで打奏するイプipuなどは舞踊フラhulaの伴奏楽器として基本的である。おもに踊手自身が採物として手に持つ音具としては,2本の硬い木片を打ち合わせるカラアウkala’au,小さなひょうたんやヤシ殻の中に小石,種子を入れた羽毛飾つきがらがらとしてのウリーウリーulī’ulī,竹筒を櫛のように細く裂いたささら竹を身体に打ちつけるプーイリpū’ili,2対の平らな石を両手に持ってカスタネットのように打ち合わせるイリイリ’ili’iliがそれぞれ特有の音色により変化に富んだ音響世界をつくり出す。こうした楽器の伴奏による歌唱メレmele,また無伴奏の朗唱風歌唱オリoliにおいては,自然知識,社会生活,恋愛,宗教に関連した歌詞が,ビブラートやグリッサンドの多用により表現力を与えられ,ひいては宇宙的な力すなわちマナを発揮すると考えられていた。…
※「いりいり」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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