改訂新版 世界大百科事典 「イワネズミ」の意味・わかりやすい解説
イワネズミ (岩鼠)
African rock rat
Petromus typicus
ジリスに似た齧歯(げつし)目イワネズミ科の哺乳類。アフリカイワネズミともいう。アフリカ南西部のナミビアとアンゴラ南部に分布。体長14~20cm,尾長13~18cm,体は岩の狭い割れ目に潜り込むのに適し,肋骨を動かして平たくすることができる。頭も扁平で耳介が短く,前足に4指,後足に5指がある。体毛は軟らかく絹状,体の大部分は暗褐色で後半身は橙色を帯び,尾には黒褐色のあまり長くない毛を生ずる。吻(ふん)と眼のまわりは黄白色。乳頭は2~3対で体側にある。歯は20本,前臼歯が1対,臼歯が3対あり,いずれも根がある。山ろくの岩の多い乾燥地にすみ,岩の割れ目や岩穴を隠れ家とする。おもに昼行性で朝と午後遅く穴から出て採食と日光浴をするが,ときには日没後も活動する。食物は緑草,種子,果実,花など。12~1月に1~2子を生む。本種だけからなるイワネズミ科はほかに似たものがなく,南アメリカのオクトドン科とヤマアラシ科に類縁を求める説が対立している。
執筆者:今泉 吉典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報