改訂新版 世界大百科事典 「ジリス」の意味・わかりやすい解説
ジリス (地栗鼠)
ground squirrel
ユーラシアと北アメリカの草原,岩地,砂漠に,穴を掘ってすむ地上生のリス類。齧歯(げつし)目リス科ジリス属Citellus(=Spermophilus)に属する哺乳類の総称。姿はシマリスに似るが,体が大きく,手足と尾が短く,手足のつめは強大でより穴を掘るのに適した体をしている。耳はふつう小さく,ほとんど頭の毛に隠れる。体色は黄色ないし白色の腹面を除き,灰褐色あるいは砂色で,シマリスに似た縞模様あるいは白斑がある。捕食者などの敵が近づくと,かん高い声で騒がしく鳴き仲間に危険を知らせ,危険を感じ警戒する際やものを注視する際に,後肢で立つのが特徴。体長13~35cm,尾長6~23cm,体重150~800g。ユーラシアのものをハタリス,北アメリカのものを狭義のジリスと分けて呼ぶことがあり,この場合,前者のほうが一般に四肢と尾が短く,体つきはずんぐりしていて,より地下性の傾向が強い。ヨーロッパハタリスC.citellus,キンイロジリスC.lateralis,ジュウサンセンジリスC.tridecemlineatus,カリフォルニアジリスC.beecheyi,ホッキョクジリス(オナガホッキョクジリス)C.undulatusなど,30種ほどが知られている。
どの種も昼間活動する昼行性で,ふつう複雑に入り組んだ長さ20mに達するトンネルでつながった一つの大規模な巣穴に集団ですむ。おもな食物は草の葉,種子,果実,球根,根などで,キノコ,昆虫,小鳥なども食べる。ほお袋に食物を詰めて巣穴に運び,大量の食物を蓄える。北方にすむ種では冬眠し,冬眠から覚めた後の春の食物欠乏時を蓄えた食物で過ごす。また,一部の砂漠にすむ種は,夏の乾燥した時期を休眠(夏眠)して過ごす。雌はふつう年に1回春に繁殖し,妊娠期間23~31日で,2~15子,ふつう4~6子を生む。寿命は最長のもので8年。ジュウサンセンジリス,カリフォルニアジリスなどの一部の種は,ときに大発生して,農作物に大害を与える。なお,ジリスの名は広義には地上生のリス類の総称として使われ,この場合には,マーモット,ボバック,プレーリードッグ,シマリス,アフリカジリスなども含まれる。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報