改訂新版 世界大百科事典 「オクトドン」の意味・わかりやすい解説
オクトドン
degu
Octodon degus
デグーともいう。齧歯(げつし)目オクトドン科のネズミに似た哺乳類。ペルー西部とチリの標高1200m以下の草原や丘陵地に分布。体長15cm,尾長12cm前後,頭は長く大きく,耳介はほとんど裸出する。前足に4指,後足に5指があり,足の指には剛毛があって鋭いつめを覆っている。体毛は柔らかく,まばらに長毛を混生,尾の毛は先へしだいに長くなり,先のほう1/3では黒い毛の房を形成する。体の背面は灰色ないし褐色,ときに橙色を帯び,目のまわりと腹面は黄白色。岩の裂け目,根の間,他の動物の穴などにすみ,敵が近づくと尾を立てて走り穴に逃げ込む。ときには低い木に登るが,おもに地上で昼間活動し,球根,樹皮,サボテンなどを食べる。年数回,1腹1~10子を生む。乳は4対あり,生後3週で離乳する。尾をつかまえると,皮を残して逃げ,後で尾の裸出した部分を自分でかみ取る。しかし尾は再生はしない。チリの山地,草原にすむボリ(フサオデグー)Octodontomys gliroides(英名mountain degu/bori)は,体長,尾長とも18cm前後,毛が柔らかく密でチンチラに似る。チリの標高3000mまでの山地にすむコルロSpalacopus cyanus(英名coruro)は尾が短く4~5cm,体長14~16cm,耳介が小さく,前足のつめが長く,みずから長い穴を掘って生活する。オクトドン科はツコツコ,フチア,ヌートリアなどに近縁の原始的な南アメリカの齧歯類で,北アメリカのパラミスから降下したものと考えられ,漸新世後期に早くも姿を現している。
執筆者:今泉 吉典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報