改訂新版 世界大百科事典 「インクタマバチ」の意味・わかりやすい解説
インクタマバチ
Cynips gallaetinctoriae
膜翅目タマバチ科の昆虫。体長5~6mmの褐色がかったハチで,中国西部から東ヨーロッパに分布する。幼虫はナラ類の小枝に直径15~20mm,ほぼ球形の虫こぶをつくる。この虫こぶは没食子(ぼつしよくし)/(もつしよくし)と呼ばれ,とくにQuercus lusitanica var.infectoriaというナラにつくられた虫こぶは,タンニンを70%近くも含んでいる。このため古くから,イラン,トルコ,ギリシアなどからヨーロッパに輸出され,インキの製造,染色,皮なめしに用いられてきた。他のタマバチがナラ類につくる虫こぶも,主として皮なめしに使われてきたが,タンニンの含量は30%前後にすぎない。
執筆者:上条 一昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報