虫こぶ(読み)むしこぶ

百科事典マイペディアの解説

虫こぶ【むしこぶ】

虫【えい】(ちゅうえい)。アブラムシやハチなどの昆虫その他の小動物の寄生によって刺激され,葉・茎・根などの組織が異常に発達してこぶ状あるいは特殊な形状となったもの。形は寄生者の種類によって決まっている。虫こぶは組織中にタンニンを含み,ヌルデの付子(五倍子)やナラ類の没食子のようにタンニン資源として利用されるものもあるが,一般に作物や果樹にできた虫こぶはクリタマバチのように着花を妨げ,害を与えることが多い。
→関連項目五倍子タマバチノブドウ没食子

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世界大百科事典 第2版の解説

むしこぶ【虫こぶ insect gall】

動物が植物に寄生,共生し産卵した結果,植物体の一部が,こぶ状に発育したもの。虫癭(ちゆうえい)ともいう。虫こぶを作る動物は99%が昆虫で,ほかにダニ,クモ,糸状虫がある。とくにブナ科植物に作るインクタマバチの虫こぶを没食子,ヌルデ属植物に作るアブラムシ類の虫こぶを五倍子と呼び,タンニンの原料とする。しかし,作物,果樹にできた虫こぶは,生育の妨げとなる。例えば,ブドウネアブラムシ,タマナコフキアブラムシ,モモコフキアブラムシ,モモコブアブラムシ,クワシントメタマバエ,マツシントメタマバエ,クリタマバチなどによるものである。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

虫こぶ
むしこぶ

おもに昆虫が産卵、寄生することによって植物体組織が異常肥大成長してできるこぶ。虫(ちゅう)えいともいう。細菌・菌類による菌えいとともに「えい瘤(りゅう)」とよばれることもある。こぶの典型的なものでは、中央の空間に虫が生息し、周囲は厚い組織に発達する。枝、茎、葉のほか、根、花、芽および果実にも形成される。奇形への誘発は、寄生者の分泌する物質による細胞の増殖と分化の異常、局部組織におこる生理調整の破綻(はたん)などが考えられている。クリタマバチのこぶでは植物ホルモンであるオーキシンの含量が高い。こぶをつくる虫には、ワムシ、線虫、クモ、ダニもあるが、昆虫が圧倒的に多い。なかでも、膜翅(まくし)目のタマバチ科と双翅目のタマカ科の昆虫類は、虫こぶの本質からも、実用面からも、もっとも重要である。前者では複雑な形のこぶ、後者では変異に富んだこぶが多い。
 有用な虫こぶとしてよく知られるものに、没食子(もっしょくし)(小アジア産のカシの枝にできるインクフシバチによるこぶ)、五倍子(ごばいし)(ヌルデの葉にできるアブラムシによるこぶ)があり、いずれもタンニンの材料として用いられる。しかし、農林業に与えている害のほうが、有用なものよりもはるかに大きい。クリタマバチは、クリの新芽に指先大のこぶをつくって成長を著しく阻害し、実の着生を皆無にする。この虫こぶは1941年(昭和16)に初めて岡山県に発生し、以来、全国に広がった。なお、チシマザサやアズマザサなどの葉に、ササウオタマカが産卵、寄生してできるこぶは、魚のようなかっこうになるので笹魚(ささうお)とよばれる。[斎藤 紀]

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世界大百科事典内の虫こぶの言及

【没食子】より

…〈もっしょくし〉とも読む。ブナ科ナラ属Quercusなどの若枝の付け根に寄生したインクタマバチCynips gallaetinctoriaeによってできる虫こぶ。樹種,虫種以外は五倍子と同じである。…

※「虫こぶ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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