没食子(読み)もっしょくし(英語表記)gallnut
nutgall

精選版 日本国語大辞典 「没食子」の意味・読み・例文・類語

もっしょく‐し【没食子】

〘名〙 小アジア中近東に産するブナ科のナラ属植物にできる虫癭(ちゅうえい)。径一~二・五センチメートルの球形または洋梨形をし、没食子酸を多く含む。タンニンインク原料鞣革(なめしがわ)用とし、薬用としては収斂(しゅうれん)剤に用いる。ぼっしょくし。〔薬品手引草(1778)〕

ぼっしょく‐し【没食子】

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デジタル大辞泉 「没食子」の意味・読み・例文・類語

もっしょく‐し【没食子】

《食べられない果実の意》小アジア産のカシナラ類の若枝に、タマバチ産卵のときに刺すことによって生じる虫癭ちゅうえい虫こぶ)。直径約2センチほどの球状タンニン酸やインクの原料。ぼっしょくし。

ぼっしょく‐し【没食子】

もっしょくし(没食子)

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改訂新版 世界大百科事典 「没食子」の意味・わかりやすい解説

没食子 (ぼっしょくし)
gallnut
nutgall

〈もっしょくし〉とも読む。ブナ科ナラ属Quercusなどの若枝の付け根に寄生したインクタマバチCynips gallaetinctoriaeによってできる虫こぶ。樹種,虫種以外は五倍子と同じである。ヨーロッパではタンニン酸の原料となることもある。Q.pedunclataにできるクノッペン没食子,Q.lusitanica var.infectoriaにできるアレポ没食子Aleppo gallなどがある。
五倍子
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没食子 (もっしょくし)

没食子(ぼっしょくし)

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百科事典マイペディア 「没食子」の意味・わかりやすい解説

没食子【ぼっしょくし】

〈もっしょくし〉とも。ブナ科ナラ属の若枝の付け根にインクタマバチが寄生して生じた虫こぶを乾燥したもの。五倍子と本質的に同じもので,寄生昆虫種類が異なるだけ。直径1〜2.5cmほどの,内部空洞がある淡黄〜帯灰緑色の球形または西洋ナシ形物質。主成分はタンニン。加水分解して没食子酸を得る。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「没食子」の意味・わかりやすい解説

没食子
もっしょくし
gallnut

ブナ科植物の葉にできる虫 癭 (ちゅうえい) で径 2cmぐらいの塊状。モッショクシバチ Cynips tinctoriaの産卵に起因する。没食子酸の誘導体であるタンニンを含み,染料皮なめし,インキの材料などに使われる。「ぼっしょくし」とも読まれる。

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世界大百科事典(旧版)内の没食子の言及

【没食子】より

…ヨーロッパではタンニン酸の原料となることもある。Q.pedunclataにできるクノッペン没食子,Q.lusitanica var.infectoriaにできるアレポ没食子Aleppo gallなどがある。五倍子【善本 知孝】。…

【インクタマバチ】より

…幼虫はナラ類の小枝に直径15~20mm,ほぼ球形の虫こぶをつくる。この虫こぶは没食子(ぼつしよくし∥もつしよくし)と呼ばれ,とくにQuercus lusitanica var.infectoriaというナラにつくられた虫こぶは,タンニンを70%近くも含んでいる。このため古くから,イラン,トルコ,ギリシアなどからヨーロッパに輸出され,インキの製造,染色,皮なめしに用いられてきた。…

【虫こぶ】より

…虫こぶを作る動物は99%が昆虫で,ほかにダニ,クモ,糸状虫がある。とくにブナ科植物に作るインクタマバチの虫こぶを没食子,ヌルデ属植物に作るアブラムシ類の虫こぶを五倍子と呼び,タンニンの原料とする。しかし,作物,果樹にできた虫こぶは,生育の妨げとなる。…

※「没食子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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