改訂新版 世界大百科事典 の解説
ウィラモーウィツ・メレンドルフ
Ulrich von Wilamowitz-Moellendorff
生没年:1848-1931
ドイツの古典学者。ポルテ,ボン,ベルリンに学び,ベルリン(1874),グライフスワルト(1876),ゲッティンゲン(1883),ベルリン(1897)の諸大学で古典学の諸分野の講義を行った。彼の学問的貢献は,古文書学,パピルス学,碑文学などの基礎分野を含めて,古代ギリシア文学のほとんどすべての作者・詩人たちの原典批評と校訂作業,韻律学研究,歴史記述文書の文献学的研究,ギリシア宗教研究等々きわめて多岐にわたり,まさに超人的な業績によって古代ギリシア研究の歩みを飛躍的に前進させた。厳密な学問的対象把握と詩的想像力の両翼に支えられた彼の方法は,とくに《ホメロス研究》(1884),前古典期抒情詩人の諸研究,エウリピデス《ヘラクレス》注釈(1887),そして《アイスキュロス悲劇作品》校訂(1914)などの,驚嘆すべき実りを結んだ。1870年代,ニーチェの《悲劇の誕生》に対する彼の破壊的な批判攻撃は大スキャンダルを招いたが,彼の学問的展望をいささかも曇らせることはなかった。
執筆者:久保 正彰
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報