改訂新版 世界大百科事典 「ウィルトン文化」の意味・わかりやすい解説
ウィルトン文化 (ウィルトンぶんか)
南アフリカ共和国ケープ州のウィルトンWilton遺跡を標式とする石器時代文化。木や骨の柄にはめこんで使用する小型の石器=細石器が多用されたことに特色があり,ヨーロッパ・アジアの中石器文化に相当する。骨製の尖頭器・錐などの道具や,ダチョウの卵殻あるいはスレート製の垂飾が一般的に用いられたのも特徴の一つ。南アフリカから東アフリカにかけての草原に分布し,岩陰または湖岸に占地した遺跡もみられる。完新世(沖積世)初めの湿潤期を中心に栄え,いくつかの地域相に分かれながら歴史時代までつづいた。終末ごろになると,土器,磨製石器などの新石器文化要素や金属器が受容されたが,その経済的基盤は狩猟・採集・漁労のままであった。
執筆者:大参 義一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報