細石器(読み)さいせっき(英語表記)microlith

翻訳|microlith

精選版 日本国語大辞典 「細石器」の意味・読み・例文・類語

さい‐せっき ‥セキキ【細石器】

〘名〙 広義には後期旧石器時代の細小石器。狭義には中石器時代の石刃(せきじん)石器で、木や骨などの軸にはめこんで使われた細かい石器。日本先土器時代には各地でつくられたが縄文時代には見られない。マイクロリス。ミクロリス。

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デジタル大辞泉 「細石器」の意味・読み・例文・類語

さい‐せっき〔‐セキキ〕【細石器】

長さ2、3センチの小形石器。木や骨角の軸に数個はめこんで、ナイフ・槍・鎌として用いた。旧石器時代末から、所により新石器時代に見られる。

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改訂新版 世界大百科事典 「細石器」の意味・わかりやすい解説

細石器 (さいせっき)
microlith

小型の,あるいは細かい石器を意味し,石器の形状の特徴から生まれた名称。フランスのフェラン・タルドノア遺跡(1879)やマス・ダジール洞窟(1887)の調査でこの種の石器の存在が知られた。日本で細石器と訳され,学史に現れるのは昭和の初めころからである。世界史的にみて細石器が製作・使用された時代はおよそ1万年前ころである。地域により年代,文化編年に多少の違いはあるが,旧石器時代の末期から新石器時代の初めにかけて(その中間に中石器時代を置くことがある)の時代を示標する石器の一つである。旧石器時代の石器づくりを概観すると,石器類の主体は独立した大型のものから小型のものへと移っていくが,この流れの背後には後期旧石器時代に最高潮に達した石刃技法の完成がある。細石器づくりはこの技術の発展したものであり,二つの大きな流れをもつ。一つはヨーロッパアフリカ,西アジア,インドにまたがる地域に分布する石刃技法そのものの小型化あるいは縮小化とみられる小型石刃(幅約1~1.5cm,長さ数cm以下)を利用して作る石器類である。この小石刃の側辺に抉りを入れて斜めに折り取ってできる小型彫刻刀micro-burinsや小石刃の鋭い縁を一部に残して半月形,台形,三角形状に加工する幾何学形細石器geometric microlithと呼ばれるものである。他はモンゴル高原シベリア,日本,アラスカにまたがる地域に分布圏をもつもので,石刃石器の一つであった彫刻刀graverあるいは舟底形石器keeled-scraper類から生ずる不用な石屑部分を逆に有効に活用したといえる細身(幅約0.5cm)の石刃類である。特色ある石核を準備する特徴があり,これらを細石核,細石刃と呼ぶ。細かい石器類は単体で鏃や銛などの狩猟具として用いるが,組み合わせていっそう合理的な道具(コンポジット・トゥールcomposite toolと呼ぶ)として用いることができる。木や骨の柄に溝を掘り,鋭い側縁を並べて樹脂などで固めた銛や,農耕文化の発祥の地西アジアでは穀草の刈取りに鎌として用いた。鎌の鋭い縁は刈り取るとき稲科植物に含まれる珪酸分によって被膜され,切れ味が悪くなったり,ときには刃こぼれも生じたであろう。この点,簡便に取替えのできる互換性のよさは細石器のすぐれた面であるといえよう。日本の細石器は分布圏としてはモンゴル型細石器に属し,全国的に発見される。北海道を中心にした細石刃づくりには湧別技法が知られ,九州にはそれに近い西海技法があり,中間帯には舟底形石核や日本の細石器文化研究の足がかりとなった矢出川遺跡の細石核などがある。ただ九州地方では複雑な様相を示し,上場(うわば)遺跡ではナイフ形石器台形石器,細石刃が共伴することが知られた。ナイフ形石器は先行する時代から引き継いだものであり,台形石器は形の上では幾何学形細石器に似たものである。さらに細石器類が縄文時代草創期の土器の一群に伴って発見されることも福井洞穴の調査から知られるようになった。
石器 →中石器時代
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百科事典マイペディア 「細石器」の意味・わかりやすい解説

細石器【さいせっき】

細長い石刃(せきじん)を割った剥片(はくへん)の片面に加工した長さ2〜3cm大の微細な石器。三角形,三日月形,台形などのものがある。多くは数個を木や骨に付けて銛(もり),ナイフ,釣針,彫器などとして使用された。中石器時代の代表的遺物で,旧石器時代末や新石器時代にも若干みられる。日本では後期旧石器時代末ごろに使用され,列島各地から出土する。
→関連項目アジール文化カプサ文化沙苑文化タルドノア文化ナトゥフ文化剥片石器マリタ

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「細石器」の意味・わかりやすい解説

細石器
さいせっき

ミクロリスmicrolithともよばれる小さな石器。幅1センチメートル、長さ5センチメートル以下ぐらいのきわめて小さな石器であり、単独で使用するものではなく、木や骨の柄(え)にはめ込んで使われた。小さいためきわめて軽く、また一定の石材からもっとも長い刃を得ることができる。先史時代にあっては良質の石材は限られており、そのためもっとも能率のよい方向へと石器製作の技術は発展していった。その方向の頂点にあるのが細石器である。後期旧石器時代末期から中石器時代にかけてもっとも盛行し、新旧両大陸ともにみられる。このように世界的にみられるので、その形態、あり方はさまざまである。世界的にみた場合には、小さな石刃(せきじん)の形をあまり変えずに使っている例が多いが、ヨーロッパ、西アジア、北アフリカといった環地中海地域には、長方形、台形、三角形、半円形といった幾何学形をしたものもある。これらは幾何学形細石器とよばれる。

[藤本 強]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「細石器」の解説

細石器
さいせっき

ヨーロッパ中石器時代のマイクロリスmicrolithの訳語。長さがほぼ3cm以下の極小の石器。木や骨製の柄の側縁に刻んだ溝に複数の細石器を装着して刃部とした組合せ道具を作るのが特徴。狩猟用の尖頭(せんとう)具や切截・削剥用の加工具として用いる。約1万年前の晩氷期から後氷期にかけて世界のほとんどの地域に分布した普遍性の高い石器。ヨーロッパ・北アフリカ・西アジアから南アジアには小型の石刃や剥片(はくへん)に細部調整を加えた幾何学形細石器が分布し,シベリアから環太平洋地域北部には石刃を著しく小型にした細石刃細石器が分布し,細石器文化の2大潮流とされる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「細石器」の意味・わかりやすい解説

細石器
さいせっき
microlith

長さ数 cm,幅 1cm前後の小型の石器。なかには長さが 1cmに満たないものもある。後期旧石器時代末に現れ,ことに中石器時代に盛行した。不定形な石器もみられるが,幾何学形細石器と呼ばれるものは,長方形,三角形,台形,半月形を呈している。これらは主としてアフラシア大陸西部に分布する。個々の石器は単独で用いられるものではなく,木または骨の柄の片側あるいは両側に縦に刻まれた溝へ数個ないし十数個がはめこまれ,ナイフ,鎌,あるいは槍,銛として使用された。刃部が損傷すれば,その部分だけをはめ替えればよい。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「細石器」の解説

細石器(さいせっき)
microlith

三日月形,梯形,長方形,三角形を呈する幾何学的形態で,わずか2~3cmの小剥片(はくへん)の石器。これらは独立した石器ではなく,棒の先端につけて槍としたり,あるいは数個を木,骨,角の側縁の溝にはめこんで,銛(もり),鋸(のこぎり),ナイフ,鎌などとしたもの。フリント製細石器の初現は後期旧石器時代にあり,北アフリカ,西ヨーロッパに現れ,中国においては中期旧石器時代のオルドス文化に小型品の存在が認められる。日本の縄文時代ごく初期まで用いられた。

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旺文社世界史事典 三訂版 「細石器」の解説

細石器
さいせっき

旧石器時代後期から中石器時代に発達した石器
2〜3㎝の鋭利な剝片 (はくへん) を加工して作った。鏃 (やじり) ・銛 (もり) ・鎌 (かま) などに使用され,狩猟・漁労・採集技術の進歩を示す。乾燥地帯の遊牧民族では新石器時代にはいっても広く用いられた。

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旺文社日本史事典 三訂版 「細石器」の解説

細石器
さいせっき

旧石器時代最終期の小型の石器
小型の刃器を骨・木・角などに刻まれた溝に数個をはめこんで,組合せ道具の刃に使用された。

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世界大百科事典(旧版)内の細石器の言及

【中石器時代】より

…しかし,ヨーロッパの中でも,中石器時代という用語があまり使用されず,農耕文化出現以前の最終末旧石器時代ということで続旧石器時代Epipalaeolithicの語が使われる地域もある。 ヨーロッパにおける中石器時代は,きわめて小型の石器,すなわち細石器によって特徴づけられる。この細石器自体は,後期旧石器時代にすでに存在しているが,中石器時代にはとくに優勢となる。…

※「細石器」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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