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採集 サイシュウ

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デジタル大辞泉の解説

さい‐しゅう〔‐シフ〕【採集】

[名](スル)標本・資料などにするために、取って集めること。「民俗語彙を採集する」「植物採集

出典|小学館 この辞書の凡例を見る
監修:松村明
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大辞林 第三版の解説

さいしゅう【採集】

( 名 ) スル
標本や資料などにするため、とりあつめること。 「昆虫-」 「用例を-する」

出典|三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

採集
さいしゅう

おもに自然物(動物・植物・化石・鉱物など)を採り集めること。切手など人工のものを集めるのは、通常、採集とはいわず、収集という。ことばを談話や文献のなかから拾い集めることを採集ということもある。ここでは、おもに動植物の採集について述べる。なお、「化石」「岩石」「鉱物」の採集については、それぞれの項目を参照されたい。
 採集の目的は、食用、薬用、趣味、研究、教育などさまざまであるが、食用としての果実・根菜や小動物の採集は、古く旧石器時代から行われている。趣味としての収集や、研究・教育を目的とした採集が始められたのは比較的新しい。日本でも、昔は植物採集は、ほとんどが薬草採集に限られ、「薬狩り」「採薬」などとよばれていたという。
 採集の目的によって、留意すべき事項は異なる。食用として動植物を採集する場合は、食用となるものか否かなどについての正確な知識をもたなければならない。キノコなどは、食用となるか否かは調理法によっても異なり、調理法を誤れば中毒することもある。
 研究・教育を目的とする採集でも、標本とする場合と、飼育する場合、あるいは実験材料にする場合で採集の方法が異なる。標本とする場合には、なるべく完全なものを採らなければならない。たとえば、草本植物では、かならず花または実をつけて採るようにしたい。また、葉や茎、根も分類するうえで必要である。飼育する場合には、生かしたままで持って帰らなければならず、途中で植物が枯れたり、暴れたために動物が弱ってしまったりしてはならない。
 どのような目的で採集するにしても、留意すべきことは、いつ、どこで、どのような方法で、何を採集するか、ということである。植物も動物もそれぞれの生活史をもっており、花の咲く時期や成体になる時期は、種類によって異なっている。また、植物も動物も、種類によって異なる分布域をもっている。それぞれの分布域の内部においても、生物は特定の生息場所にのみ生息している。また、動植物の大きさや、動物の習性によっても、採集の方法は異なる。効果的に採集を行うためには、上述の事項についての正確な知識をもつ必要がある。
 研究・教育を目的とした採集においては、いつ、どこで採集したかを記録しておかなければならない。採集地のわからない標本はほとんど価値がない。以下に、研究・教育を目的とした動物と植物の採集のポイントを示す。[吉田 真]

動物の採集


昆虫採集
昆虫は種類も数も非常に多く、陸上のほとんどすべての場所に生息している。トンボやチョウなど、形態や色彩が美しいものも多くて、比較的容易に捕獲できるために、研究者だけでなく、子供たちや多くの愛好者たちが昆虫採集を行っている。捕獲用具としては、ネット(捕虫網)が基本的な用具である。これは枠、袋、柄(え)の三つの部分からなっている。採集の対象や方法によってネットの構造は異なる。チョウやトンボの採集には、小さく畳めるスプリング製の枠と、つなぎのない1本の柄をもつネットを使うことが多い。しかし、シジミチョウなど高いところを飛ぶものでは、数本の柄をつないだ長いものを用いなければならない。草むらややぶのスウィーピング(捕虫網をふるって、草や木についている虫を捕らえること)によって採集する場合は、草や灌木(かんぼく)に負けないじょうぶな枠を用いなければならない。ビーティングは、木の枝や幹をたたいて昆虫を網に落とす方法であり、テント地を使った四角形の網を用いるが、こうもり傘で代用してもよい。水生昆虫を採集する場合には、金属製の特別な網が必要である。
 網の中の小昆虫を集めたり、花の上や地表の昆虫を採集するには、吸虫管が便利である。また、地上を歩き回る昆虫を捕まえるには、ピットホール・トラップ(落し罠(わな))が用いられる。そのほかに、樹液に集まる昆虫(各種甲虫(こうちゅう)、鱗翅(りんし)類など)を捕まえるために、クヌギの幹に糖蜜(とうみつ)を塗る方法がある。
 捕獲した昆虫が暴れてはねや脚(あし)などを破損させないために殺虫管(または瓶)を用いることが多い。チョウ、ガ、トンボなどは三角紙に入れるので殺虫管は必要としない。その薬品としては、普通、酢酸エチルを使用する。ただし、長時間入れておくと、変色したり、固くなったりするので、早めに取り出すのが望ましい。[吉田 真]
海産動物の採集
海産動物は、底生性、浮遊性、遊泳性の三つのグループに大別される。ここでは、おもに海岸での底生性動物の採集について述べる。
 海岸は満潮線の上部、満潮線と干潮線の間、干潮線の下部の三つに分けられる。満潮線と干潮線の間の帯状の地域は潮間帯とよばれる。潮間帯は、潮が満ちれば水没し、潮が引けば底面が露出するために、温度・湿度など無機的諸要因の変化が著しい場所である。底質も、泥・砂・礫(れき)・岩などいろいろあり、さまざまな動物が数多く生息している。海岸での採集は、通常、干潮時に行われる。したがって、採集を行う際には、「潮汐(ちょうせき)表」や「潮位表」によって、採集できる時間を確かめなければならない。
 岩礁には多くの海藻が付着している。海藻の表面には、ウズムシ類、多毛類、等脚類など、さまざまな小動物が付着している。これらの小動物の採集には、イソガネなどを使って海藻を岩からはがし、海水を入れたバットまたは洗面器の中でそれを洗うのがよい。岩の間や大きな石の下にも多くの小動物がいる。転石地帯では、じょうぶな棒で石を起こすことによって、イソギンチャク類、ヒトデ類、貝類など多数の動物を捕まえることができる。また、砂泥地帯では、シャベルやくわで砂泥を掘り、大形の動物を捕まえることができる。小形の動物は砂泥をふるいにかけて採集することができる。[吉田 真]
プランクトンの採集
プランクトンとは浮遊性生物の総称であり、植物・動物のさまざまな分類群を含んでいる。動物では、ミジンコ類、ケンミジンコ類、ワムシ類、各種の原生動物などがこれに含まれる。
 プランクトンの採集には、プランクトンネットが使用される。この網には、長いロープのついたものと柄のついたものとがある。池などで採集する場合には、長いロープのついたネットを岸から沖に向けて投げ、一定の速度でたぐり寄せる。速く引けば表層の、遅く引けばより深い層のプランクトンが採集される。船でネットを引く方法もある。海や湖などでは、水面からの深さに応じてプランクトンの種類が変わるので、船の上からネットを沈めて垂直に引き上げる方法もとられている。プランクトンは、1日のうちで垂直移動する場合があり、昼間だけでは採集されない場合があるので、夜間にも採集したほうがよい。採集日中に種名同定する場合には、生かして持ち帰り、顕微鏡の下で同定する。固定には少量のホルマリンを使用する。[吉田 真]
土壌動物の採集
土壌動物とは、土壌中に生息する動物の総称であり、節足動物(ダニ、トビムシ、クモ、カニムシ、ザトウムシ、ムカデなど)、緩歩動物(クマムシ)、環形動物(ミミズ、ヒル)、軟体動物(カタツムリ)など、さまざまな分類群を含んでいる。
 土壌動物の採集には、ピットホール・トラップ、ハンド・ソーティング、またはツルグレン装置を用いる。ピットホール・トラップは、餌(えさ)を入れた瓶や缶を土中に埋めて、オサムシ、シデムシ、ザトウムシなどを集める方法であり、餌の種類によって捕まえられる動物の種類も異なる。ハンド・ソーティングは、野外で行う場合と、落ち葉や土壌を研究室に持ち帰って行う場合とがある。野外で行う場合は、土壌をすこしずつ崩しながら、出現した小動物をピンセットや吸虫管で捕まえる。実験室で行う場合は、試料をバットに入れ、落ち葉や土を徐々に取り除き、小動物を捕まえていく。これらの方法は、比較的大きな動物に対して有効である。体長1ミリメートル以下の動物は、普通はツルグレン装置で採集することが多い。ツルグレン装置は、小動物を熱によって土壌中から追い出す装置である。底が網の目の容器の中に試料を入れ、これを電灯によって上から熱すると、小動物は下部から逃れて下に落ち、水またはアルコールの入った瓶に落ち込み、捕まえられる。[吉田 真]
クモ類の採集
捕虫網によるスウィーピング、ビーティング、ピットホール・トラップ、吸虫管など、昆虫の採集に用いられた方法は、そのままクモ類の採集にも用いられる。そのほかに、管瓶の中にクモを追い込む方法もある。手でつかむ場合もあるが、この場合には、クモの体や脚をつまんではいけない。クモは小さいのでつまみにくいし、脚を切って逃げられたり、かまれる場合もある。手のひらを使って、クモを握り、こぶしの中に入れてしまうやり方がもっともよい。土中に生息するクモを採集する場合は、根掘りを用いる。クモを採集する際の用具としては、捕虫網、管瓶、アルコール、ピンセット、吸虫管、管瓶ケース、根掘り、綿などがある。管瓶は大小をそろえておく。大きな管瓶は採集用として用い、75%アルコールを入れておき、採集したクモを入れる。小さな管瓶は、生かして持ち帰る場合に用いる。大型のピンセットは土を掘ったり、樹皮をはいだりするのに使う。管瓶から死んだクモを移すには、小さなピンセットのほうがよい。綿は、クモを生かして持ち帰る場合の管瓶の仕切りとする。[吉田 真]

植物・菌類の採集

植物の採集の用具としては、根掘り、はさみ、ナイフ、折り畳み式のこぎりなどがある。根掘りは植物の採集に必須(ひっす)の用具で、鋼鉄製のじょうぶなものがよい。園芸用の移植ごては、固い地面を掘ったりすると容易に曲がってしまうことが多い。はさみは、直径1センチメートルぐらいの枝が切断できる頑丈なものが望ましい。
 次に、採集した植物を収容する用具としては、胴乱(どうらん)と野冊(やさつ)が一般的なものである。胴乱はブリキ製の収容具であり、採集した植物を安全に持ち帰ることができる。しかし、ビニル袋などでもまにあわせることができる。野冊は、ベニヤや竹製の2枚の板を紐(ひも)で締めるようになっているもので、採集した植物を新聞紙などに挟んで板の間に入れ、紐で締める。
 胴乱やビニル袋では、運搬の際に花などを傷めてしまうことがあるので、よい標本を得るためには野冊を用いたほうがよい。ただし、野冊による採集は、現場で手間がかかる点と、かさばる点で難点がある。
 以上のほかに、植物の採集には、筆記用具、荷札、ルーペなども用意すべきであろう。[吉田 真]
陸上植物の採集
草本類は、小さいので採集は比較的容易であるが、多年生のものは根が発達しており、完全な形で採集するのは容易ではない。草本類は、花(あるいは実)と根をつけて採ることが望ましい。実は完熟したものを採るが、このような実は落ちたり、はじけたりするから、十分に注意しなければならない。
 木本類の場合には、その全体を採るわけにはいかないから、花や葉などのついた、その種を代表する部分を採らなくてはならない。若木と老木とでは葉の大きさや形の違うものがあるので注意を要する。樹皮がとくに必要な場合は、目だたない部分をすこしだけはぐようにする。
 シダ類の採集は、基本的には種子植物の採集方法と同じである。シダ類でとくに重要なことは、胞子嚢(のう)のついた葉を選ぶことである。種子植物では、葉が丸まったり、花や実がとれたりしやすいため野冊が必要であるが、シダ類ではそうした心配はなく、野冊も必要がない。
 コケ類は、根元からていねいにはがし、紙袋などに入れて持ち帰る。木に生えている場合には、その木の名前がわかるほうがよい。地面に生えている場合にも、その場所の特徴をできるだけ詳しく記録しておくことが望ましい。[吉田 真]
藻類の採集
藻類は、根状部をつけているものを選んで採集する。海岸に打ち上げられたものには不完全なものが多いから注意を要する。
 岩礁についている海藻を根元から採るには、イソガネが便利である。海藻の持ち帰りには胴乱も用いるが、足場も悪く、胴乱が岩角にぶつかったりするので、布製の袋のほうが都合がよい。小さな海藻は、大きなものと混じり合わないように、ビニル袋などに入れてから布袋に入れたほうがよい。[吉田 真]
菌類の採集
菌類は、種類も多く、形や色も多彩で興味深いものが多い。サルノコシカケのような固いものの採集には、のみや金づちも必要となるが、大部分のものは柔らかく採集は容易である。ただし、地上部分だけでなく、地下の菌糸も採ったほうがよい。柔らかいものは、持ち運びの途中で壊れやすいので、籠(かご)などに入れて静かに持ち帰らなければならない。なお、キノコ類は乾燥すると色も形も変わることが多いので、あらかじめ写生をしておいたほうがよい。[吉田 真]
『牧野富太郎編『牧野新植物図鑑』(1972・北隆館) ▽渡辺弘之監修『土壌動物の生態と観察』(1973・築地書館) ▽牧野富太郎著、中村宏編『牧野富太郎植物記8 植物採集』(1974・あかね書房) ▽水野寿彦監修『淡水生物の生態と観察』(1977・築地書館) ▽波辺忠重・小菅貞男著『標準原色図鑑3 貝』(1978・保育社) ▽青木良・橋本健一著『昆虫の採集と標本の作り方』(1979・ニュー・サイエンス社) ▽野村健一著『昆虫学ガイダンス』(1980・ニュー・サイエンス社) ▽藤本一幸著『採集と標本』(1980・保育社) ▽牧野富太郎著、本田正次編『原色牧野植物大図鑑』『原色牧野植物大図鑑・続編』(1982、1983・北隆館) ▽福島博編『淡水植物プランクトン』(1983・ニュー・サイエンス社) ▽水野寿彦著『日本淡水プランクトン図鑑』改訂版(1984・保育社) ▽八木沼健夫著『原色日本クモ類図鑑』(1986・保育社) ▽吉見昭一・高山栄著『京都のキノコ図鑑』(1990・京都新聞社) ▽宮武頼夫・加納康嗣編著『セミ・バッタ』(1992・保育社) ▽海野和男・筒井学文・写真『虫を採る・虫を飼う・標本をつくる』(1998・偕成社) ▽藤本一幸著『海べの動物』(1999・保育社) ▽三上昇監修『ぼくらの小動物 採集と飼育入門』(1999・成美堂出版) ▽水野寿彦・高橋永治編『日本淡水動物プランクトン検索図説』(2000・東海大学出版会) ▽牧野富太郎著、小野幹雄ほか編『牧野新日本植物図鑑』(2000・北隆館)』

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