日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ウォールデン――森の生活
うぉーるでんもりのせいかつ
Walden, or Life in the Woods
アメリカのエッセイスト、思想家ヘンリー・D・ソローの主著。1854年刊。マサチューセッツ州のウォールデン池のほとりに自ら建てた小屋で、1845年7月から1847年9月まで生活した経験を、初夏から次の春までの1年にまとめたエッセイ。簡素な生活の可能性を描いた「経済」、池のほとりの世界を音でとらえた「音」、豆を栽培した体験を細かく記録した「豆畑」、魚の生態や池の測量に関する「冬の池」などいくつかの章で、細かい観察とそれに基づく思索を、ときにはユーモアを交えて展開している。この書は「自然の崇高な啓示」がいかにして得られたかの記録であり、啓示を受け止めた素朴な魂の記録でもある。
[松山信直]
『神吉三郎訳『森の生活』全2冊(岩波文庫)』▽『富田彬訳『森の生活』(角川文庫)』