日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ウルツ‐フィティッヒ反応
うるつふぃてぃっひはんのう
Wurtz-Fittig reaction
炭化水素の合成法として古くから知られた有機化学反応の一つ。有機ハロゲン化合物に金属ナトリウムを作用させ脱ハロゲンにより2分子結合した形の炭化水素を得る。1855年フランスのウュルツ(ウルツ)がエーテル溶液中でヨウ化エチルに金属ナトリウムを作用させるとブタンが生成することをみいだした。ハロゲン化アルキルにアルカリ金属を反応させてアルカンを得る反応をウルツ反応という。
1862年ドイツのフィティッヒがウルツ反応を芳香族ハロゲン化合物に拡張してビフェニル類を合成した。これをフィティッヒ反応とよぶが収量は低い。しかしブロモベンゼンと臭化ブチルとからはブチルベンゼンが収量よく合成される。
ウルツ‐フィティッヒ反応とは、狭義にはこのような芳香環へのアルキル側鎖の導入をさすが、広義には以上のすべての反応の総称である。どちらもカップリング反応であるが、現在ではより効果的なカップリング反応が開発されているので、実用的価値は減っている。
[湯川泰秀・廣田 穰]