改訂新版 世界大百科事典 「オコト」の意味・わかりやすい解説
オコト
Okot p'Bitek
生没年:1931-82
ウガンダの詩人。アチョリ語と英語で書く。父はミッションスクールの教師。自らも教師となったが,1958年フットボール選手としてイギリス遠征を機に社会人類学を学ぶ。64年帰国し,国立文化センター所長,ナイロビ,イフェ両大学教授ののちマケレレ大学教授を歴任。アチョリ族の伝統文化の土俗価値を掘り起こし,詩・演劇・音楽・踊りを包括した総合芸術の発展に努める。散文詩《ラウィノの歌》(1966)は,アフリカ的価値を代表する妻が民族的表現とイメージを駆使して西欧文化に去勢された夫を鋭く揶揄(やゆ)し,圧倒するもの。《オショルの歌》(1970)では,この夫が西欧的価値の弁護に懸命になるが,ここに見られる諧謔と風刺の底には,民族的価値に対する揺るぎない自信が存在する。《お前の歯は白いか,ならば笑え》(1953)は唯一のアチョリ語小説。民話集《野兎と犀鳥》(1978)もある。東アフリカの代表的詩人で,1972年ケニヤッタ文学賞受賞。
執筆者:楠瀬 佳子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報