…巻二〈情を入れし樽屋物語〉は,樽屋の女房おせんと麴屋(こうじや)長左衛門との姦通が樽屋によって発見され,おせんは自害し,長左衛門は処刑される。巻三〈中段に見る暦屋物語〉は,京の暦屋の手代茂右衛門と暦屋の女房おさんの姦通,駆落ち,発見された後の2人の処刑を描く。巻四〈恋草からげし八百屋物語〉は,江戸本郷の八百屋の娘お七と寺小姓吉三郎との恋をとりあげ,吉三郎に会いたさゆえに放火したお七は火刑に処せられ,吉三郎は出家する。…
…大坂網島大長寺の心中事件を脚色した際物(きわもの)であるが,近松世話悲劇の傑作。大坂天満の紙屋治兵衛と曾根崎新地の遊女小春は深い仲になっていたが,治兵衛にはおさんという女房があり,2人の子までいる。治兵衛と小春は死ぬ約束をしており,2人はその機会をうかがっている。…
※「おさん」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」