改訂新版 世界大百科事典 「オースフォーム」の意味・わかりやすい解説
オースフォーム
ausforming
過冷却オーステナイト状態で塑性加工した後,焼入れ-焼戻しを行うという,鋼の加工熱処理法の一つ。これによって得られる,強度が高く靱性(じんせい)のよい鋼は,自動車のばね,ロケットエンジンのケース等に使用される。過冷却オーステナイト状態とは,鉄に炭素,ケイ素,ニッケル,モリブデン等を添加した合金鋼を850~900℃に加熱してオーステナイト化した後,450~600℃の間に急冷したときの状態をいい,この場合には数十分以上にわたって準安定状態のオーステナイトの組織が存続する。この間に70%程度以上の加工度で変形させ,急冷後焼戻しをすると,加工を行わずに焼入れ-焼戻しした鋼に比べて,靱性をほとんど低下させることなく強度を30%程度以上上昇させることができる。加工によって高密度の転位が導入されること,および変態によって生成するマルテンサイトならびに焼戻し時の析出物が微細化することによって鋼が強化されるのである。
執筆者:伊藤 邦夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報