改訂新版 世界大百科事典 「オールト定数」の意味・わかりやすい解説
オールト定数 (オールトていすう)
Oort constants
太陽近傍の恒星の視線速度および固有運動の観測から,銀河系の回転を導くために,1927年オランダの天文学者J.H.オールトによって導入された定数。太陽を含む大恒星集団としての銀河系は,その重心のまわりに回転することによって平衡を保つ。銀河面内の星や星間ガスは,銀河中心のまわりにほぼ円運動を行っており,そのような運動を行う太陽近傍星の視線速度Vr,固有運動μlを観測すると,それらは星々の太陽からの距離rと銀経lに依存して次のように変化する。
Vr=Ar sin2l,μl=B+A cos2l
ここに現れる定数AとBをオールト(銀河回転)定数と称する。A-Bが太陽の銀河回転角速度を与え,これに太陽と銀河中心との間の距離を乗ずれば回転速度が得られる。太陽は200~250km/sの速度でペルセウス座の方向に運動し,約2億年を要して銀河中心のまわりを一周することが確かめられている。現在,広く採用されているオールト定数の値は次のとおりである。
A=0.0032秒/年=15km/s/kpc
B=-0.0021秒/年=-10km/s/kpc
執筆者:宮本 昌典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報