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平衡 へいこうequilibrium

翻訳|equilibrium

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

平衡
へいこう
equilibrium

広い意味では熱平衡のこと。単に熱力学的平衡ばかりでなく,外力と内力との釣合いとか,ポテンシャルエネルギーの極小点,化学反応における平衡などを含む。系が平衡に達しているとき,系は平衡状態にあるという。 (→化学平衡 )

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デジタル大辞泉の解説

へい‐こう〔‐カウ〕【平衡】

[名](スル)《「衡」は、はかりのさお》
物のつりあいがとれていること。均衡。「からだの平衡を失う」
つりあいがとれて物事が安定した状態にあること。「精神の平衡を保つ」
物体または物質に変化を起こす原因がありながら、それらの効果が相殺し、一定を保っている状態。力学的平衡・熱平衡など。

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百科事典マイペディアの解説

平衡【へいこう】

釣合とも。物体が外力の作用のもとに静止している(力学的平衡),熱伝達可能な物体の間で熱の移動が起こらない(熱平衡),導体内に電気の移動がない(電気的平衡),化学反応を起こしうる物質間で反応が進行しない(化学平衡),互いに拡散混合する物質間で各物質の濃度が一定に保たれる(濃度平衡)などの場合,一般に系は平衡状態にあるという。
→関連項目温度活性化エネルギー三重点相律

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岩石学辞典の解説

平衡

平衡とは作用している力がすべて互いに均衡をとる結果,系はいつまでも温度,圧力,化学組成などが同じ状態を連続的に保つ時の系の状態.本来は天秤などで秤量物体と錘との重さが釣り合い,棹が水平になることを意味する.これを拡張して一般にいくつかの物体からなる系が,物体間の相互作用および外力の作用のもとに静止する場合に,系は力学的平衡状態にあるという.この状態では系はいつまでも動かない状態を保っている.この考えを拡張して熱力学では熱や物質の交換,物体内の化学反応を含めて熱平衡の概念となった.熱平衡の概念は狭義には物体間の熱の移動が止まることをいうが,一般には熱力学的関数を極小または極大にする状態である.広義の熱平衡には化学平衡放射平衡も含まれる.変化があってもその様子が時間的に変わらない場合は定常状態で,平衡状態と定常状態とは区別されるべきであるが,歴史的に両者が混同されている場合もある[長倉ほか : 1998].岩石学で特に変成岩岩石学では平衡の概念は最も基礎的な概念の一つと信じられている.変成相の概念は完全な平衡状態を仮定したもので,関係する系の各化学成分の化学ポテンシャルの値が一定としている.また相図(平衡状態図)は平衡状態を前提にして作成されたものである.しかし実際の岩石では広い範囲にわたって平衡状態で形成されたものはないので,始めから平衡状態を仮定すると間違いを生じる[鈴木 : 1994].

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世界大百科事典 第2版の解説

へいこう【平衡 equilibrium】

てんびんの二つの皿のそれぞれに物体と分銅をのせて重さを測るとき,分銅の質量がちょうど物体のそれと一致するときに限りてんびんの腕が水平の位置に静止し続ける。これがてんびんによる質量測定の手段であるが,その理由を力学上の原理に求めるならば,〈質点系の各部分に働く力によって生ずべき各質点の変位に対し,この力がなす仕事の総和が0に保たれるような配置がこの質点系の静止の位置を決める〉という仮想仕事の原理がそれに相当する(仮想変位の原理)。

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大辞林 第三版の解説

へいこう【平衡】

( 名 ) スル
〔天秤てんびんの両端に載せた物の重さが等しく竿が水平になっている意から〕
物の釣り合いがとれていること。ある物質やある状態が、変化することなく、安定に存在していること。また、その状態。 「 -を保つ」
力が釣り合っている状態。力学的平衡。
系のエネルギーが変化しない状態。熱平衡。様々な系について、相平衡・化学平衡・放射平衡などが定義されるが、いずれも熱平衡の特殊な場合である。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

平衡
へいこう
equilibrium

物体(あるいは物質)の状態が時間の経過とともに変化しないで一定であるとき、この物体は平衡にある、または平衡状態にあるという。つり合いともいう。
 外部から完全に孤立した物体、換言すれば外部からの作用をまったく受けない物体が終始平衡状態にあることは明らかである。物体が初めから複数個ある場合には物体系(体系ともいう)として考える。外部からの作用がある場合には、その作用を及ぼす物体を物体系のなかに取り込んで考えることもある。平衡は、力学的平衡、熱(的)平衡、化学(的)平衡に分けて議論されるが、力学的平衡は「つり合い」の項で、化学平衡については「化学平衡」の項で記述しているので、ここでは主として熱平衡について記述する。[沢田正三]

熱平衡

物体の状態を表す量、数学的にいえば変数のことを状態変数という。この際、物体の状態を外部から規定する変数は外部変数といわれ、この外部変数のもとで決まる物体の状態を表す変数は内部変数といわれる。たとえば、力学的変数では、力は外部変数であり、体積は内部変数である。
 自然界には、「物体系を孤立状態に十分長時間保持すると、物体系の状態変数はそれぞれ時間の経過とともに変わらない一定の値をとる」という経験法則が存在する。この終わりの状態を熱平衡または熱平衡状態という。とくに、物体系がただ二つの物体A、Bからなる場合、この二つの物体が熱平衡にあるときには、物体の熱的状態を規定する熱的外部変数がこの二つの物体で共通になっているのであると考えることは、後述のように、力学的平衡では作用反作用の法則が成り立つことから、まことに自然である。さらに自然界には「物体Aと物体Bとが熱平衡にあり、さらに物体Aと物体Cとも熱平衡にあるときには、物体Bと物体Cとも熱平衡にある」という、三物体間の熱平衡法則がある。結局「熱平衡状態にある物体系を構成する各物体の熱的外部変数はすべて等しい」ということがいえる。この共通の熱的外部変数が、温度というもっとも重要な熱的変数なのである。外部変数と内部変数とはつねに対をなしている。温度という熱的外部変数と対をなす熱的内部変数はエントロピーである。
 物体(または物体系)の安定性を示す尺度はその物体の熱力学関数(熱力学的ポテンシャルともいう)である。これは純力学現象におけるポテンシャルエネルギーにあたるものであって、種々の状態変数の組合せに対して種々のものがある。
 熱力学によると、物体の熱平衡状態においては、その物体の熱力学関数が最小値をとっている。たとえば、等方性物体が温度一定、圧力一定のもとで熱平衡に達すると、ギブス自由エネルギーという熱力学関数が最小値をとる。物体の熱平衡状態は、要するに最安定状態であって、その物体の普通に実現している状態である。[沢田正三]

力学的平衡

机の上に置かれて静止している物体は、これに働く重力をもって机を押しており、一方、机は抗力をもってこの物体を押している。これらの重力と抗力とはいずれも鉛直線上にあって、前者は下方を、後者は上方を向き、かつ両者の大きさは等しい。この事実は、より一般的には、作用反作用の法則とよばれている。この例で、物体が静止しているのは、物体の状態(例では空間座標)が時間とともに変わらないことであり、すなわち物体は力学的平衡にある。[沢田正三]

化学平衡

化学的変化の平衡を化学平衡、液相と固相間の変化のような相変化の平衡を相平衡という。化学反応で、可逆反応においておこりうる反応の一方向の速度と、逆方向の反応の速度とがちょうど等しくなって、見かけ上反応がとまったようになることがある。このとき化学平衡の状態になったという。平衡時の成分濃度の比は質量作用の法則に従い、その比は一定の値をとり、平衡定数という。相平衡では、相の境を通しての一方の相から他の相への移行の速度と、その逆方向への移行の速度がつり合ったときに達せられる。[戸田源治郎・中原勝儼]
『熊井俊彦著『熱力学と化学平衡』(1976・培風館) ▽H・キャレン著、山本常信・小田恒孝訳『熱力学――平衡状態と不可逆過程の熱物理学入門』上下(1978・吉岡書店) ▽渡辺啓著『化学平衡の考え方――化学反応はどこまで進むか』(1998・裳華房) ▽神崎凱・千熊正彦・黒澤隆夫著『化学平衡と分析化学』第2版(2003・広川書店)』

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