日本大百科全書(ニッポニカ) 「カサネカンザシゴカイ」の意味・わかりやすい解説
カサネカンザシゴカイ
かさねかんざしごかい / 重簪沙蚕
環形動物門多毛綱定在目カンザシゴカイ科のヒドロイデス属Hydroidesの海産動物の総称。沿岸の岩礁に着生し、白い石灰質の棲管(せいかん)の中で生活し、体は鰓冠(さいかん)部、胸部、腹部に分かれる。鰓冠部には数対から数十対の鰓糸(さいし)と1、2本の柄があり、その先端には殻蓋(かくぶた)をつける。殻蓋は二つの杯状体が上下に重なっており、そのためにこの名がつけられている。下部杯状体は漏斗状で辺縁に20~55個の歯状突起をもつが、上部杯状体の形にはさまざまなものがある。胸部は7剛毛節からなり、背足枝には有翼の針状剛毛、腹足枝には櫛(くし)状剛毛がある。腹部は多くの体節からなる。日本には、現在ヒドロイデス属に13種が知られているが、そのうちエゾカサネカンザシゴカイH. ezoensisとヒドロイデス・フシコラH. fusicolaの2種が東北地方から北海道にも分布している。そのほかの種類は黒潮の影響する海域のみにすむ。エゾカサネカンザシゴカイの棲管は上方に伸びて高さ10センチメートルほどの群集をつくることもあり、発電所の水路などに密着すると被害を与える。
[今島 実]