改訂新版 世界大百科事典 「カブリオール脚」の意味・わかりやすい解説
カブリオール脚 (カブリオールあし)
cabriole leg
S字形に湾曲した家具の脚の形式をいう。中国の宝珠をつかむ竜の脚をかたどった工芸品に由来し,17世紀後期オランダ貿易を通じてヨーロッパにもたらされた。カブリオールという語はフランスのバレエ用語〈跳躍〉を意味するが,この語はイタリア語の〈カプリオーラ〉(雌鹿の跳躍)にまでさかのぼる。はじめルイ14世後期のフランス家具に導入され,1700年ころにはイギリスをはじめヨーロッパ諸国に移入された。イギリスのクイーン・アン様式のいすやテーブルに採用されたカブリオール脚の膝部には,帆立貝の彫刻がほどこされたが,ジョージアン期初期のカブリオール脚には精巧なライオンのマスクや葉飾がとりいれられた。18世紀中期のチッペンデール様式の家具では,クロー・アンド・ボール(爪と玉)の足をつけた華麗なカブリオール脚が人気を博した。フランスのルイ15世時代のカブリオール脚はスリムな曲線と渦巻形の足を備えており,洗練されたロココの装飾形式に到達している。イギリスでは18世紀後半にR.アダム(アダム兄弟)の新古典様式の推進によって,先細りのスマートな直線脚に変わったが,この現象はフランスをはじめ他の大陸諸国でも認められた。
執筆者:鍵和田 務
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報