日本大百科全書(ニッポニカ) 「かりんとう」の意味・わかりやすい解説
かりんとう
かりんとう / 花林糖
油菓の一種。祖型は唐菓子とみられるが、天保(てんぽう)年間(1830~1844)に江戸・深川六間堀の山口屋吉兵衛が売り出してから、爆発的に流行した駄菓子。当時は行商の菓子で、夜間に売り歩いたようである。売り子は下り藤(さがりふじ)の紋に「深川名物・可里んたふ」と書いた大提灯(ちょうちん)を目印としたが、その数は200人を超えたといわれる。明治期になると、かりんとう売りを「カリカリ煎餅(せんべい)屋」といった。ブリキ缶にかりんとうを入れ、早い口調で「雨が降ってもカァリカリ、カリカリカリ」と触れながら、すっ飛ぶような早足で売り歩いた。かりんとうの材料は小麦粉、膨張剤、砂糖。小麦粉に、砂糖か水飴(みずあめ)、または卵、膨張剤を加えて水でこね、適当な大きさの棒状にして油で揚げ、白ざらめをまぶすか、黒砂糖の掛け物を施す。生地(きじ)に卵を用い、揚げてから白ざらめをまぶしたものは風味が淡泊であるが、かりんとうらしい駄菓子の味は、水飴で練り黒砂糖をかけたほうにある。
[沢 史生]