改訂新版 世界大百科事典 「カローシュティー文書」の意味・わかりやすい解説
カローシュティー文書 (カローシュティーもんじょ)
Kharoṣṭhī
西北インドがアケメネス朝ペルシアの支配下にあった前5世紀ころに,その王朝の公用文字であるアラム文字を,ブラーフミー文字を参考に改良し,インド語表記に適したカローシュティー文字がつくられた。西北インドにはこの文字による碑文も発見されているが,一般にカローシュティー文書というのは,中央アジアのクロライナ(楼蘭),ニヤ,エンデレから出土した木簡,皮,絹布,紙などに書かれた世俗文書を指す。これらの文書は命令書,通達書,報告書,判決文などの官庁書類や個人間の手紙を含む。およそ3~4世紀ころにつくられ,言語は古代インド通俗語であるプラークリット語を使用した。なお,カローシュティー文書には若干の仏典も発見されているが,とりわけホータン出土の樺皮仏典《法句経》は古代インド語写本類中最古(前2世紀ころ)のものとして知られている。
執筆者:庄垣内 正弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報