に‐や
[1] (
格助詞「に」に疑問の
係助詞「や」の付いたもの) 場所・時などに関して、疑問または反語の意を表わす。
※
万葉(8C後)二〇・四四四一「立ちしなふ君が姿を忘れずは世の限り爾夜
(ニヤ)恋ひ渡りなむ」
① (
文中に用いて、
文末の活用語と呼応する) 疑問または反語の意を表わす。
※竹取(9C末‐10C初)「
南海の浜に吹き寄せられたるにやあらんと思ひて」
(イ) 文末に用いて、疑問の意を表わす。…のだろうか。
※枕(10C終)三三「
功徳のかたにはさはらずと見えんとにや」
(ロ) 文中の
挿入句に用いて、断定をさけて疑いを残す意を表わす。
※
神皇正統記(1339‐43)下「さても
八月の十日あまり六日にや、〈略〉かくれましましぬ」
にや
〘間投助〙
口調をととのえるのに用いる。
京都の大原・八瀬あたりで用いられた。
[
補注]「にやあ」と長呼して用いられることもある。「父
(たあ)も母
(うも)も京へ出たにやあ、我
(げら)も出てにやあ」〔
仮名草子・
東海道名所記‐六〕など。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「にや」の意味・読み・例文・類語
に‐や
[連語]
《断定の助動詞「なり」の連用形+係助詞「や」》
1
㋐文中にあって連体形の結びを伴う用法。…で…か。
「朝夕の宮仕へにつけても、人の心をのみ動かし、恨みを負ふつもり―ありけむ」〈源・桐壺〉
㋑文末にあって結びを伴わない用法。…なのか。
「あやし。ひが耳―」〈源・若紫〉
2 軽く詠嘆的に言い切る意を表す。
「さもあるべき事―」〈奥の細道〉
[補説]1㋐は下に「あらむ」「あるらむ」「ありけむ」などを伴うことが多い。2は江戸時代の用法。
《格助詞「に」+係助詞「や」》疑問・反語の意を表す。…に…か。
「そなた―まゐり来べき」〈かげろふ・下〉
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