改訂新版 世界大百科事典 「カンリフ委員会」の意味・わかりやすい解説
カンリフ委員会 (カンリフいいんかい)
Cunliffe Committee
イギリス政府が1918年1月に設けた調査委員会で,正称は〈戦後通貨と外国為替に関する委員会〉。委員長はイングランド銀行総裁W.カンリフ卿。同年8月に出された第1次中間報告は通貨・金融理論史上,重要な文献である。それは第1次大戦後に,できるだけ早急に戦前と同じ国際金本位体制を再建すべきだとした。金本位制下では,国際収支赤字→金流出→金利上昇→外国短資流入→国際収支黒字および金流出→金利上昇→国内産業投資減→雇用減→資本財・消費財需要減→物価低下→輸出増・輸入減→国際収支黒字という自動調節作用が働き,自動的に通貨・外国為替相場・経済の安定がもたらされると考えたからである。これは古典派経済学の物価・正貨流出入機構論(国際収支赤字→金流出→物価低下→輸出増・輸入減→国際収支黒字)を精緻(せいち)にしたものである。さらに,金本位制復帰のために,国債発行の停止,膨張していた政府紙幣の回収,金準備増をはかるべきだとし,最終的には戦前平価(1ポンド=4.866ドル)で金(地金)本位制に復帰すべきであるとした。この報告はイギリスの金本位制復帰(1925)の基礎となった。
執筆者:西村 閑也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報