改訂新版 世界大百科事典 「ガロロマン美術」の意味・わかりやすい解説
ガロ・ロマン美術 (ガロロマンびじゅつ)
ガロ・ロマン時代における,ローマ化したガリアの美術をいう。ローマ人はガリアの重要な都市と主要道路を確保したにすぎず,他の地域にはなおケルト人のラ・テーヌ文化の伝統が強く残っていた。そのため,美術は都市においてはローマ的色彩を強く示したが,一般には多かれ少なかれケルト的伝統が残存した。それゆえ,ローマ人がもたらした純粋なローマ美術は別にして,一般には,石造彫刻(ロックペルテューズRoquepertuse,アントルモンEntremontの出土品など)においてもブロンズ彫刻(ヌビ・アン・シュリアスNeuvy-en-Sulliasの出土品など)においても,自然主義に拘泥しない大胆な量塊性,リズムの表現などを通して,神秘的な影を宿した力強い精神性を表しているものが多い。貨幣の浮彫やブロンズ小品に見られる抽象性への強烈な志向も,顕著な特色の一つであり,それらはやがて11世紀に開花するロマネスク美術の重要な源泉の一つをなしたと考えられる。
→ケルト美術
執筆者:柳 宗玄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報