日本大百科全書(ニッポニカ) 「がんづけ」の意味・わかりやすい解説
がんづけ
佐賀県の郷土料理。唐辛子入りのカニの塩辛で、珍味の一つとされる。古くから有名なもので『万葉集』のなかにこれを詠んだ歌があり、飛鳥(あすか)時代の宮中でも用いていた。江戸時代には非常食として珍重されていた。何年でも保存がきくし、古いほうが風味がよくなる。がんづけは「蟹漬(かにづけ)」のなまったことばであるが、これに用いるカニはシオマネキという名の小さいカニで、腹側の俗称ふんどしという部分を除き、甲らや脚(あし)などはそのまま臼(うす)に入れて搗(つ)きつぶす。これに塩と唐辛子を適宜加え、半年ぐらい熟成させるが、1か月後でも食べられる。カニ1キログラムに対し塩300グラム、赤唐辛子5~6本を用いる。「白めしにかにしおからや三年たてば蔵たおす」ということばがあるように、飯に添えると食が大いに進むし、酒の肴(さかな)にもまた好適である。
[多田鉄之助]