飛鳥(読み)アスカ

デジタル大辞泉 「飛鳥」の意味・読み・例文・類語

あすか【ASCA】[Advanced Satellite for Cosmology and Astrophysics]

Advanced Satellite for Cosmology and Astrophysics》平成5年(1993)2月に打ち上げられたX線天文衛星ASTRO-Dアストロディーの愛称。宇宙科学研究所(現JAXAジャクサ)がぎんがの後継として開発。幅広いエネルギー領域のX線に対応するX線望遠鏡、広視野のX線撮像装置を搭載。ブラックホール周囲の降着円盤の内側から放射されるドップラー効果を伴うX線、宇宙のX線背景放射、M81銀河に出現したばかりの超新星の観測などを行った。平成13年(2001)3月に運用完了。

あすか【飛鳥/明日香】

奈良県高市郡明日香村のこと。また、その付近一帯の称。推古朝以来百余年、都が置かれ、橘寺たちばなでら石舞台古墳高松塚古墳など史跡が多い。
[補説]「飛鳥」の表記は、「あすか」にかかる枕詞「とぶとりの」の「とぶとり」を当てたもの。書名別項。→明日香

ひ‐ちょう〔‐テウ〕【飛鳥】

空を飛んでいる鳥。また、非常に動作の速いさまをたとえていう。「飛鳥早業はやわざ

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精選版 日本国語大辞典 「飛鳥」の意味・読み・例文・類語

あすか【飛鳥・明日香】

  1. ( 「飛鳥」の字は、「明日香(あすか)」の枕詞「とぶとり」をあてたもの )
  2. [ 一 ] 奈良県高市郡明日香村付近一帯の称。北は大和三山にかぎられ、中央を飛鳥川が流れる。豊浦宮に推古天皇が即位して後百余年間都が置かれた。飛鳥浄御原宮(あすかのきよみはらみや)、橘寺、高松塚古墳、マルコ山古墳のほか、多くの史跡に富む。歌枕。
    1. [初出の実例]「飛鳥(とぶとり)の明日香(あすか)の里を置きて去(い)なば君があたりは見えずかもあらむ」(出典:万葉集(8C後)一・七八)
  3. [ 二 ]あすかやま(飛鳥山)[ 一 ]」の略。

ひ‐ちょう‥テウ【飛鳥】

  1. 〘 名詞 〙 飛ぶ鳥。空を飛ぶ鳥。
    1. [初出の実例]「飛鳥番々遇」(出典:凌雲集(814)三月三日侍宴〈賀陽豊年〉)
    2. 「智慧ある時は飛鳥をも落すべし、猛獣をも捕ふべし」(出典:日本読本(1887)〈新保磐次〉五)
    3. [その他の文献]〔易経‐小過卦〕

とぶ‐とり【飛鳥】

  1. 〘 連語 〙 空を飛び行く鳥。空をかける鳥。ひちょう。
    1. [初出の実例]「奴理能美が養(か)ふ虫、一度は匐ふ虫に為り、一度は鼓に為り、一度は飛鳥(とぶとり)に為りて」(出典:古事記(712)下)

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日本歴史地名大系 「飛鳥」の解説

飛鳥
あすか

[現在地名]明日香村大字飛鳥付近

飛鳥は飛鳥坐あすかにいます神社・飛鳥寺を中心として、おおむね東は南北に連なる丘陵から西は飛鳥川流域に至り、南はたちばな寺・石舞台いしぶたい古墳近辺から北は天香久あめのかぐ山に近接するきわめて狭小な地域であった。飛鳥板蓋あすかいたぶき宮・同河辺かわべ宮・同川原かわら宮・同岡本おかもと宮・同浄御原きよみはら宮・後飛鳥岡本のちのあすかおかもと宮・小墾田おはりだ宮・しま宮などの伝承地を内部あるいは周辺に残す。

アスカについては「古事記」「日本書紀」に飛鳥・阿須箇(斉明紀)、「万葉集」に明日香・飛鳥・阿須可・安須可などの用字がみられる。金石文では天智天皇七年の船首王後墓誌に「阿須迦宮」、持統天皇三年の采女氏塋域碑に「飛鳥浄御原大朝廷」とある。飛鳥の表記はアスカにかかる枕詞「飛ぶ鳥の」によるという説がある(古事記伝)

語源については賀茂真淵・伴信友らはイスカの鳥名に結び付け、その群棲地と考証した。ほかにア(接頭語)スカ(洲処)説、アス(崩地)(処)説などがある。飛鳥地方には大字島庄しまのしよう川原かわはら豊浦とようらがあるなど水辺に関係する地名が多い。「万葉集」には「飛鳥川七瀬の淀」とみえ、「赤駒のはらばふ田井」「水鳥の多集すだく水沼」を開拓して宮都を造営したという歌がある。「日本書紀」崇峻紀には「飛鳥真神原まかみのはら」のまたの名を「飛鳥苫田とまた(湿地帯)と記し、洲処地であったことが推知される。

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改訂新版 世界大百科事典 「飛鳥」の意味・わかりやすい解説

飛鳥 (あすか)

奈良盆地南東部の歴史的地名。明日香とも書く。飛鳥の用字は枕詞〈飛ぶ鳥の〉をあてたもの。一般には高市郡明日香村の東部と橿原市の一部のかなり広い地域を呼んでいるが,本来は天香久山の南,橘寺・岡寺に至る間の低い丘陵に囲まれた小範囲をさし,中央を飛鳥川が流れる。語源については,アは接頭語,スカは住処で,集落の意とする説など諸説あるが,定かでない。この地域には,早く允恭天皇の遠飛鳥宮,顕宗天皇の近飛鳥宮が営まれたとも伝えるが,7世紀のはじめ,推古天皇が豊浦宮で即位し,さらに近くに小墾田宮(おはりだのみや)を造営して以後,舒明天皇飛鳥岡本宮皇極天皇飛鳥板蓋(いたぶき)宮斉明天皇飛鳥川原宮・後飛鳥岡本宮,天武天皇の飛鳥浄御原(きよみはら)宮など〈飛鳥〉を冠する宮室がつぎつぎと営まれ,孝徳朝の難波遷都と天智朝の近江遷都の短期間を除き,694年(持統8)の藤原京遷都までここが日本の古代政治の中枢となり,律令制国家もここを基点に誕生した。その間天武朝初年には,飛鳥を中心に一定の行政区画としての倭京(わきよう)がすでに設定されたらしいが,その規模・構造はなお明らかでない。ただ奈良盆地を等間隔でまっすぐ南北に走る古道,上ッ道・中ッ道・下ッ道が飛鳥を中心に設定され,その中ッ道が東西直線道の山田道と飛鳥寺の北西地点で交差するので,その付近が飛鳥の中心であったと考えられる。また飛鳥の地には蘇我氏が建てた飛鳥寺をはじめ,坂田寺豊浦寺山田寺橘寺川原寺大官大寺など多くの寺院が建立され,いわゆる飛鳥・白鳳の仏教文化が大いに栄えたが,天武朝には倭京京内の諸寺は24の多きに及んだという。さらに飛鳥の西,檜隈(ひのくま)の地には5世紀に朝鮮半島から渡来した倭(東)漢氏(やまとのあやうじ)が定住し,蘇我氏との関係を深めながら,その勢力をしだいに飛鳥に及ぼしてきたので,仏教以外にも渡来文化の影響の濃い遺跡や遺物が多く,飛鳥寺の北から出土した須弥山石・道祖神像や,酒舟石・猿石・亀石など〈飛鳥の石造物〉が有名である。この地域の遺跡については,1956年以来,奈良国立文化財研究所と奈良県立橿原考古学研究所によって発掘調査が継続されており,多くの成果があがっているが,さらに80年5月にはその歴史的風土を保存するため,〈明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法〉が制定・公布された。

 なお大和の飛鳥とは別に,河内南部,二上山の西麓にも飛鳥の地名があり,大和の〈遠つ飛鳥〉に対して〈近つ飛鳥〉と呼んだともいうが,一般にこの方は飛鳥戸(あすかべ)と呼び,〈安宿〉と書いて,大和の飛鳥と区別している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「飛鳥」の意味・わかりやすい解説

飛鳥
あすか

明日香、安須加、安宿などとも書かれた。もっともよく知られるのは、奈良盆地の南東部、現在の奈良県高市(たかいち)郡明日香村。「あすか」の地は、ほかに奈良県で10か所、大阪府、京都府で各3か所、岐阜県で2か所、長崎県、広島県、和歌山県、三重県、静岡県、東京都、山形県、青森県などにもある。「あすか」の音のおこりは、安宿の朝鮮音アンスクから転訛(てんか)したとの説もあるが、スカ(スガ)=浄地にアの接頭語がついたものとみられる。

 大和(やまと)の飛鳥は、古代には飛鳥川の東岸をいい、すでに弥生(やよい)文化の遺物も認められるが、灰褐色、黄褐色土壌群に開発が進んだのは5世紀後半以来であった。これには北方系の乾田農法の技術が用いられたとみられ、この開発をさらに推し進めたのは蘇我(そが)氏を中心とする人々であった。以後、飛鳥川の流域一帯が、古代統一国家形成の主舞台となった。飛鳥に大和国家の王宮が置かれたのは、伝承的な遠飛鳥宮(とおつあすかのみや)(允恭(いんぎょう)天皇)を最初とし、近飛鳥八釣(ちかつあすかのやつり)宮(顕宗(けんそう)天皇)、飛鳥岡本宮(舒明(じょめい)天皇)、飛鳥板蓋(いたぶき)宮(皇極(こうぎょく)天皇)、後飛鳥岡本宮(斉明(さいめい)天皇)、飛鳥川原宮(同)、飛鳥浄御原(きよみはら)宮(天武(てんむ)天皇)である。これに飛鳥川西岸の豊浦(とゆら)宮(推古(すいこ)天皇)、小墾田(おはりだ)宮(同)、田中宮(舒明天皇)などを加えていう場合もある。周辺には渡来人も多く住み、この地で創出された6世紀末から7世紀中葉過ぎまでの文化を飛鳥文化という。

[門脇禎二]

『佐藤小吉著『飛鳥誌』(1944・天理時報社)』『門脇禎二著『飛鳥』(NHKブックス)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「飛鳥」の意味・わかりやすい解説

飛鳥
あすか

現在の奈良県高市郡明日香村を中心とする古代の地。大和国高市郡賀美郷,遊部郷などにあたる。稲淵山に源を発する飛鳥川が流れ,大和三山(耳成山,天香具山,畝傍山)によって囲まれた奈良盆地南東部一帯。『古事記』や『日本書紀』によれば,古く允恭天皇の遠飛鳥宮や顕宗天皇の近飛鳥宮(飛鳥八釣宮),宣化天皇の檜隈廬入野宮(ひのくまのいおりののみや)などが営まれたと伝えられる。そののち,推古天皇の豊浦宮(592),舒明天皇の飛鳥岡本宮(630),皇極天皇の飛鳥板蓋宮(643),斉明天皇(皇極天皇の重祚)の飛鳥板蓋宮(655),飛鳥川原宮(655),後飛鳥岡本宮(656),天武天皇の飛鳥浄御原宮(672),持統天皇の藤原宮(694)など,皇居が多く構えられた。
藤原宮は元明天皇が和銅3(710)年に平城京へ遷都するまで継続し,長い間,大和朝廷の政治,文化の中心地であった。そのため,この地には古刹,旧跡などの文化遺産や古伝承も少なくない。斉明1(655)年に建立された川原寺(弘福寺)跡,推古25(617)年聖徳太子の建立にかかる大官大寺(百済大寺,大安寺)跡,蘇我馬子によって創建された飛鳥寺(本元興寺)跡,定林寺跡檜隈寺跡などは,いずれも史跡に指定されている。允恭天皇が「盟神探湯(くかたち)」によって,氏姓をただしたという伝説の地,甘橿丘(あまかしのおか)もこの明日香村にある。そのほか,文武天皇以前の山陵も多い。また,古墳も数多く存在し,中尾山古墳,石舞台古墳,岩屋山古墳,牽牛子塚古墳,高松塚古墳など,特別史跡や史跡の指定を受けている。飛鳥は万葉地名として知られる「万葉の里」でもある。

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百科事典マイペディア 「飛鳥」の意味・わかりやすい解説

飛鳥【あすか】

奈良県北西部,奈良盆地南端,高市郡明日香(あすか)村付近一帯の地域名。飛鳥川が北流し,北には大和三山がある。大和朝廷の中心地で,藤原京跡,飛鳥京跡,橘寺,石舞台古墳などの史跡に富む。
→関連項目橿原[市]磯長谷大和国

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「飛鳥」の解説

飛鳥
あすか

明日香とも。奈良盆地南部の地名。大和川支流の飛鳥川上流域。広義には大和三山に囲まれた地域を含む。語源については鳥のイスカの群棲地説,洲処(すか)説,朝鮮系渡来人の安住地(安宿)説などがある。「飛ぶ鳥の」の枕詞から飛鳥の表記が用いられた。豊浦・川原など川にちなむ地名が多い。渡来人が多く居住し,6世紀末~7世紀末に小墾田宮(おはりだのみや)・岡本宮・浄御原宮(きよみはらのみや)などの宮室や寺が集中し,政治や文化の中心地になった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「飛鳥」の解説

飛鳥
あすか

奈良県の耳成山以南,畝傍 (うねび) 山以東,飛鳥川流域の総称
6世紀末推古天皇が飛鳥豊浦 (とゆら) 宮に即位してから,710年元明天皇が平城京に遷都するまで百数十年の間,孝徳・天智の2朝を除き代々の皇居はこの地方に営まれた。歴代の皇居跡・陵墓をはじめ飛鳥寺・石舞台古墳など史跡が多く,現在古都保存地区として保護されている。

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デジタル大辞泉プラス 「飛鳥」の解説

飛鳥〔客船〕

日本の客船。1991年10月竣工。約100日間の世界一周クルーズで知られ、豪華客船の代名詞となる。2006年2月に売却(現名・AMADEA(アマデア))。後継に「飛鳥II」がある。

飛鳥〔道の駅〕

奈良県高市郡明日香村にある道の駅。国道169号に沿う。

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事典・日本の観光資源 「飛鳥」の解説

飛鳥

(奈良県高市郡明日香村)
関西自然に親しむ風景100選」指定の観光名所。

出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報

普及版 字通 「飛鳥」の読み・字形・画数・意味

【飛鳥】ひちよう

空を飛ぶ鳥。

字通「飛」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の飛鳥の言及

【倭京】より

…藤原京以前に飛鳥を中心に存在したと想定される京の仮称。6世紀末に推古天皇が豊浦(とゆら)宮で即位し,ついで小墾田(おはりだ)宮に移って以後,天武天皇の飛鳥浄御原宮に至るまでの間,飛鳥を中心につぎつぎと宮室が営まれた。…

※「飛鳥」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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