化学辞典 第2版 「クラスター触媒」の解説
クラスター触媒
クラスターショクバイ
cluster catalyst
多核錯体(クラスター錯体)を触媒として用いた場合をいい,均一錯体触媒の一種と考えられるものであるが,単核錯体とは異なった配位,活性化の機能をもち,特異な触媒作用を示すことが多い.一方,これを担体に担持,分解して金属状としたもの,および通常の担持金属触媒のうち,粒径が10 nm 以下の高分散状態のものなどを,金属クラスターとよんでいる.一酸化炭素の活性化に,カルボニルクラスター触媒が多く開発されている.オレフィンのヒドロホルミル化(オキソ合成)には,COやP(C6H5)3の配位した4核または6核のRhクラスターが有効である.Rh6(CO)16による一酸化炭素の酸化,またRu3(CO)12によるアセチレン,一酸化炭素,水素(または水)からのヒドロキノンの合成も知られている.アメリカのUCC社による,Rh6(CO)16などを用いた一酸化炭素と水素からアルコール類(メタノール,エチレングリコール,プロピレングリコール)の合成(220 ℃,600 atm)は,従来,均一触媒では不可能であったものとして興味深い.その他,クラスター触媒による種々の選択的反応が見いだされており,均一錯体触媒と不均一触媒をつなぐものとして,基礎的にも応用的にも重要である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報