日本大百科全書(ニッポニカ) 「オキソ合成」の意味・わかりやすい解説
オキソ合成
おきそごうせい
oxo synthesis
hydroformylation
アルケンと一酸化炭素と水素とを触媒の存在下で反応させて、原料のアルケンに比べて炭素数が1個多い飽和アルデヒドを合成する方法で、ヒドロホルミル化ともよばれる。通常は、得られたアルデヒドを水素化してアルコールにするので、この工程を含めてオキソ合成と総称する場合が多い。1938年にドイツのローレンOtto Roelen(1898―1995)により発見されたこの方法は、第二次世界大戦中にドイツで工業化され、戦後になってアメリカなど世界各国に普及した。
この反応は工業的には、プロピレンからブタノールを合成する場合に大規模に応用されている。反応は130~160℃、100~200気圧の条件下で、コバルト系触媒を用いて液化プロピレンと一酸化炭素と水素とを接触させる方法により行い、全収率は80%程度で、そのうちブチルアルデヒドが60~80%を占める。得られたアルデヒド混合物を精密蒸留により分離したのちに、ニッケル触媒を用いて水素化してブタノールおよびイソブチルアルコールを得る。また、オキソ合成によりオレフィンから炭素数が1個多いアルデヒドを合成し、それらを酸化して脂肪酸を得る工程により、高級脂肪酸を合成できる。
この反応でアルデヒドの収率を増すには、反応温度を低くすることが望ましい。今日では、低原子価ロジウム触媒(ウィルキンソンWilkinson触媒、RhC1[P(C6H5)3]3など)を用いて穏和な条件下で効率よくプロピレンからブチルアルデヒドを合成している。
[廣田 穰]