日本大百科全書(ニッポニカ) 「メタノール」の意味・わかりやすい解説
メタノール
めたのーる
methanol
もっとも簡単な構造のアルコール。メチルアルコールともいう。古くは木材の乾留によって得られる木酢(もくさく)液から得ていたので木精(もくせい)ともよばれた。サリチル酸など各種のカルボン酸のメチルエステルの形で、また各種のメチルエーテルの形で種々の天然物に含まれる。
無色透明で、特有の臭(にお)いの液体。水、エタノール(エチルアルコール)、ベンゼン、エーテルなど多くの溶媒と混ざり合う。メタノールは分子中に炭素原子を1個しか含まないので、同じく1個の炭素原子しか含まない炭素化合物から合成する。一酸化炭素と水素の混合物の接触反応により製造する。天然ガスの主成分はメタンであるので、これを触媒上水蒸気あるいは酸素と反応させて、水素を主成分とし一酸化炭素を含むガスをつくる。これを合成ガスとよぶ。合成ガスを200ないし400℃程度の温度、高圧下あるいは中圧下で、酸化亜鉛・酸化クロムあるいは酸化銅・酸化亜鉛・酸化クロムの触媒上で反応させてメタノールを製造する。メタノールは工業原料として使用されるので、日本では年間約200万トン生産される。ちなみにエタノールの生産量はこの約1割強にとどまる。
CO+2H2→CH3OH
メタノールの用途の一つはホルムアルデヒド(その水溶液をホルマリンという)の製造である。メタノールと空気の混合物を触媒上で600℃程度、常圧下で反応させて製造する。生成したホルムアルデヒドを原料の一つとして、フェノール樹脂、ユリア樹脂およびメラミン樹脂などのプラスチックを製造する。またロジウム触媒存在下(加圧下)、一酸化炭素と反応させて酢酸を製造するが、この方法は「メタノール酢酸法」ともよばれる。このほか溶剤として、またメタクリル酸メチルやテレフタル酸ジメチルなどのメチルエステルとして、合成繊維や合成樹脂の製造の原料の一つとして、また各種の医薬や香料などの原料としても用いられる。ガソリンに混入して自動車の耐寒燃料として、またエタノールに混入して変性アルコールとしても用いられる。なお、メタノールは引火性であり、しかも有毒(許容濃度200ppm)であるので、誤って飲用することのないよう注意する必要がある。
[徳丸克己]
メタノール(データノート)
めたのーるでーたのーと
CH3OH | |
分子式 | CH4O |
分子量 | 32.0 |
融点 | -97.78℃ |
沸点 | 64.65℃ |
比重 | 0.791(測定温度20℃) |
屈折率 | (n) 1.32855 |
引火点 | 16℃(開放) 12℃(密閉) |