クラム則(読み)クラムソク

化学辞典 第2版 「クラム則」の解説

クラム則
クラムソク
Cram rule

カルボニル基のα位にキラル炭素をもつアルデヒドケトンに対して求核付加を行ったとき,優先的に生成するジアステレオマーを予測するための規則.1952年にD.J. Cramが実験データをもとに最初に提案し,その後,多くの研究者によって理論的な裏付けを含めた再検討が行われてきた.現在,もっとも信頼されているのはFelkin-Anhのモデルであり,キラル炭素に結合したカルボニル基以外の三つの置換基を大きい順からL,M,Sとしたとき,遷移状態は図(a)の立体配座で示される.ここで,求核試薬Nuは立体障害の小さい側からカルボニル炭素を攻撃しやすくなり,主生成物のジアステレオマーを与える.置換基の一つがハロゲンなど電気的に陰性であるときは図(b)の,分子内でキレート化が可能な場合は図(c)の遷移状態がそれぞれ有利になる.

プレローグ則と並んで,カルボニル基への求核付加反応の立体選択性に関する規則として有名である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

法則の辞典 「クラム則」の解説

クラム則【Cram's rule】

カルボニル基の隣接位にキラル中心をもつケトンのジアステレオ面区別反応における経験則.キラル炭素に3種類の置換基(かさ高なほうから RlRmRs とする)が結合していると,カルボニル基は RmRs に挟まれた立体配座をとるから,攻撃試薬X-Yは立体障害のより少ないほうである Rs の側から反応することになり,優先的に生成するジアステレオマーが予測可能となる.

出典 朝倉書店法則の辞典について 情報

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