立体障害(読み)りったいしょうがい(英語表記)steric hyndrance

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「立体障害」の解説

立体障害
りったいしょうがい
steric hyndrance

(1) 反応の立体障害 ある分子が試薬と反応するとき,分子の反応中心に分子内の他の原子が近接しているために,試薬分子が反発を受けて,反応速度が減少することをいう。この現象は二分子求核置換反応 (たとえばエステル化反応) やカルボニル基への付加反応にみられる。ベンゾフェノンに対するグリニャール試薬の付加を例としてあげると,この反応では CH3MgI のグリニャール試薬は正常に付加するが,メチル基をイソブチル基に置換したグリニャール試薬を用いると,正常な付加は起らず,ベンゾフェノンにおけるカルボニル基の還元だけが起る。これはベンゾフェノン分子により,水素原子がグリニャール試薬ほど立体障害を受けにくいからである。 (2) 回転の立体障害 同一分子内で大きな原子または原子団が互いに接近すると反発力が働き,このため単結合の回転が制限されることをいう。この場合には回転異性現象を生じる。 (→立体異性 ) (3) 共鳴の立体障害 共役系化合物では,立体障害によって化合物の平面性にひずみを生じる結果,共鳴効果が減少する。たとえばフェノールの pKa (解離定数の対数の負号) は 9.99であるが,2,5-ジメチルフェノールでは酸性が減じて 10.58となる。これはメチル基の立体障害のために水酸基とベンゼン環を含む系の平面性にひずみを生じ,共鳴によるプロトン解離効果が減少するためである。このような例は安息香酸やアニリンの誘導体にもみられる。

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化学辞典 第2版「立体障害」の解説

立体障害
リッタイショウガイ
steric hindrance

分子内の非結合性の原子または原子団が,互いに接近すると斥力がはたらき,そのために結合角が正常な角度からゆがめられたり,単結合のまわりの回転が妨げられたり,π電子系の平面構造が不安定となって非平面的な構造をとったりする現象.たとえば,ビフェニルは二つのベンゼン環の間のπ電子相互作用からは平面構造が安定と考えられるが,オルト位に置換基があると,オルト位の原子または置換基間の反発が大きくなり,平面からいちじるしくずれた構造をとるようになる.さらに図のようなビフェニルのオルト置換体では,置換基のかさ高さ(ファンデルワールス半径で表される)のためにベンゼン環の間の単結合の回転が阻止され,光学異性体が単離できる.また,下表にみられるケイ素化合物の求核置換反応の速度差は,イオンOHがケイ素原子に接近する際の置換基の立体障害の大きさを反映している.このように,立体障害によって化合物の種々の物理的,化学的性質(電子吸収スペクトル,双極子モーメント,酸および塩基の解離定数,反応速度など)が異なる現象は,多くの例で知られている.ある構造についての立体障害の有無,またその程度などは,原子または原子団の大きさを考慮した適当な分子模型を使って,ある程度判定できる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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