改訂新版 世界大百科事典 「クリプトコックス」の意味・わかりやすい解説
クリプトコックス
Cryptococcus
酵母の一つで,カンジダなどと同じく,不完全菌類モニリア目の無胞子酵母のグループに含まれる。出芽によって増殖し,細胞は莢膜(きようまく)に包まれていて,条件によっては莢膜にデンプン様の多糖類を形成することがある。発酵性はもっていない。クリプトコックス・ネオフォルマンスC.neoformansは,ヒトに寄生してクリプトコックス症を引き起こす病原菌である。このクリプトコックス・ネオフォルマンスは,円形をしており,莢膜を除くと4~8μmの直径をもっている。莢膜の厚さは数μmにも達していて,多糖体からできている。また菌糸形成はみられない。この病原菌は,鳥類の糞や土壌中に広くみいだされ,呼吸器官を通じてヒトの体内に侵入する。したがってクリプトコックス症では,まず肺が侵され,後に血行性のクリプトコックス髄膜炎が引き起こされる。この病原菌は,通常の真菌培地で容易に培養できるので,培養菌を用いて診断を行うことができる。
→髄膜炎
執筆者:川口 啓明
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